自分と他人を結ぶ通路。安部公房「他人の顔」
やーっと読み終わった1冊。
安部公房「他人の顔」
途中体調悪かったり、
そもそもサクサク読みやすい文章ではなかったりで、なかなか読み進まなかったけど、やっと終わった。
ふう。
で、どんな本なのよ?
この本、なぜ手に取ったかというと。
確かルッキズム関連の本読んでたら、この本が引用されてたか、参考文献だかで載っていて気になっていて。(何の本だったか忘れちゃった)
で、本の中で顔を喪失した男が
顔のことを
「自分と他人を結ぶ通路」だと言っていたのが印象的で。
これって、
顔という通路をなくした人だからこそ、気がつけることなんだろうなと。
概要にもある通り
他人の顔という仮面を作って、色々と試す男の話なのだけど。
なんかね、内省も内省。
男の特異な独り言を聞かされている感じの、なんとも不思議な世界。
主人公、ストレングスファインダーやったら、確実に内省が一番に出てきそうだなと思うくらい(笑)
正直、最後まで読んだけど
ものすごく爽快とか、「あースッキリした」っていう感覚はない。笑
一体何だったんだろう?
私は、何を読まされていたんだろうか?
という、ほんのりとした不安や、ぼんやりとした疑問が頭の中に残る感じ。
これを余韻と呼ぶのだろうか。
という感じだったのだけど
最後に大江健三郎の解説文があり、それを読んで
やっぱり分かりにくい本だったらしい、ということが判明(笑)
で、ちょっとホッとした。
という、なんとも不思議な本。
…
こう書くと
「なんだ、退屈な本なのかな」
「これは読まないかな〜」
なんて思う人も多いと思う。
正直、読みやすくはない。
かといって、めちゃ読みにくいわけでもない。
読みやすくないけど、放棄せずに最後まで読んだのは
比喩や表現が秀逸で、素晴らしいなと思ったから。
さすが、増版に増版を重ねている本だけあるなと思った(←何様w)
※図書館で借りた手元の本は、70刷とあった
だってさ、パッと思い返しただけでも
「心理的蕁麻疹」
「生きながらの埋葬状態」
とか。
こんな言葉、出てこないでしょ?
少なくとも、私は出会ったことがないような言葉で
溢れていた。
本を読まなければ、確実に出会わないような表現。
これに出会えたことが、私にとってはすごく収穫だったなと。
…
もし自分が顔を喪失したら?
もし夫が顔を喪失したら?
どんな生活になるんだろう?
そんな想像をしながら読むのもいいかなと。
気になる方いたら、ぜひ読んでみてくださ〜い。