思いやりの輪、波及委員会。
身体が小さいテンちゃん。
小さいがゆえ、周りからかわれることも多い。
でもスポーツも得意だし、知識だって豊富。
そんなテンちゃんだから、さらに身体の小さいマルくんの気持ちに寄り添えるんだろうね。
私も背が低いから、小さい人の気持ちは分かるかもなぁ。
…
あれは小学4年生の頃。
小さくて弱そうに見えるのか、転校した先の小学校で、男子からブルーベリーの実を投げられたんよね。
慣れない下校の道。
クラスメイトと別れて、1人で歩いていたタイミングで。
ジャイアンとスネ夫みたいなフォルムの男子2人組だったな。
今でも鮮明に思い出せる。
それが、当時履いてたちびうさのソックスにも当たってさ。
あれは悲しかったな。
転校先で慣れない上に、お気に入りの靴下が汚れて。
転校当日に泣いて家に帰ったのも、忘れない。
今思うと、ジャイアンとスネ夫の照れ隠しゆえの行動だったのかもしれない。
でも当時の私は、
「小さいからイジメられるんだ」
「だから牛乳飲んで大きくなるんだ」
なんて本気で考えて、給食以外にも
毎晩牛乳飲んでたっけ。
飲んでも飲んでも、背は伸びなくて。
諦めたころには、そんなヤツらのことは忘れてたけど。
…
あの時、テンちゃんみたいなハートが強い子がいてくれたら、救われただろうな。
だからさ、マルくんはすごく嬉しかったと思うよ。
そりゃ思わずニッコリしちゃうよ。
ニッコリーノだよ。
テンちゃんに救われたマルくんも、いつか同じように誰かを救うのかもしれないね。
思いやりの波及、とでも言うのかな。
水にポチャンと投げた石が、輪を描いて波が広がるように、思いやりの輪がブワーッと広がる。
そういうのってさ、なんかいいよね。
テンちゃんも私も身体が小さいけどさ。
身体が大きいがゆえの悩みを持ってる子も、いると思うんだ。
私が幼稚園に通っていたころ
あやちゃん、という背が高い友だちがいてね。
あやちゃん、電車や新幹線に乗る度に
「小学生料金、払ってください」
って言われるんだって。
おかしな話だよね。
見た目だけで判断して、そんな要求するなんてさ。
30年以上前の話だから、今はそんなことないって思いたいけどね。
…
何が言いたいかと言うと、
大人でも、こんな風に見た目だけで判断する人がいるってこと。
でも、テンちゃんならきっと
そんな人の気持ちも想像して行動できるだろうな。
テンちゃんを、「思いやりの輪」波及委員会会長に
任命したい。