
言葉の宝箱0951【熟年離婚って、オトナとして折り返し点なんです】

妻と別居中の雑誌編集長の一博と息子がいる妻と再婚した惣菜屋の康文は幼なじみ。料理を通して友人となった中学教師の陽平は子供2人が家を巣立ち「新婚」に。3・11から1年後のGWを控え、共に50歳前後のアラフィフ、まさに人生の折り返し地点を迎えたオヤジ3人組を待っていた運命とは?夫婦、親子、友人。人と人との繋がりを、メシを作って食べることを通して、描き出したコメディータッチの家族小説。
*あとがきに”オヤジの奮闘(空回り多し)ドタバタ物語とでも呼んでいただきたいコメディーを四十代に三作書いた。『あすなろ三三七拍子』
『希望が丘の人びと』そして本作『ファミレス』”とあるように、
面白い話ではあるが、夫婦、家族、友だち、優しさ、教育、人生を考える良い機会になると思う。
・いままでの熟年離婚って、
奥さんのワガママだとか、
ダンナさんの長年の無理解や無関心のツケだとか、
いいイメージが全然ないでしょう?
それは『ここまで連れ添って来て、なぜ人生の終盤になって裏切るんだ』
っていう発想です。
でも、いまどきのアラフィフは
『ここまで』でも『人生の終盤』でもなくて、
むしろ、オトナとしてやっと折り返し点なんです (下巻P67)
・夫婦にも定年があるべきだというのは、そういう意味なんです。
妻のワガママとか女房に見捨てられたとかいう情緒的なものではなくて、
あくまでも契約がいったん満了したんだと考えれば、
すっきりしませんか(下巻P67)
・わたし、夫婦も同じだと思うんです。
結婚何年目とか、五十歳という年齢とか、子どもが独立したとか、
そういう節目に来たとき、
やっぱりこれからのことを考えたくなると思うんです。
必ずしも絶対に離婚したいというのではなくて、
FA選手が残留するのと同じように、
元のサヤに収まる可能性だって残して、
でも、このまま惰性で老後を迎えるのは嫌だ、っていう・・・(下巻P68)
・ムカつくっていうのは、
たんに不愉快で、腹が立って、頭に来てるっていうだけだ。
要するに気に入らないときにムカつくんだ(略)
ムカつくのと変わらない悔しさもあると思う。
でも、ほんとうの悔しさっていうのは、
気に入らないっていうより、納得がいかないんだ。訊きたくなるんだよ、『どうして?』って、『なんでこうなるわけ?』って・・・、
だんだん悲しくなってくるんだよ(下巻P196)
・子どもの自殺という痛ましいニュースを見聞きするたびに、陽平は思う。その子は悲しいから死を選んだのではない。
寂しさや憤りがそのまま命を絶つ理由になったわけでもない。
苦しんでいたから―――
もっと正確に言うなら、苦しめられていたから、
死を選ばざるをえないところまで追い詰められてしまったのだ。
いじめの定義ってなんだ?
厳しい指導と体罰との境界線はどこだ?
陽平は一人の教師として、親として、オトナとして、迷いなく答える。
その子が苦しい思いをしていたら、
それはすべていじめであり、体罰なのだ (下巻P215)
・大事にしろよ、友だちは(略)
男子でも女子でも、
自分の弱いところをちゃーんとわかってくれる友だちっていうのは、
ほんとうに大切な、かけがえのない存在なんだからな (下巻P222)
・夫婦に間違いも正解もないさ(略)
あるのは、うまくいったか、いかなかったか、
その違いだけなんだ (下巻P235)
・料理は、やはり、いい。
手を動かしていると無心になれる。
余計な邪念が一つまた一つと消えていくのが、
実感してわかる (下巻P239)
・メシのうまさってのは、
つくる奴と食べる奴、両方の汗と涙で決まるんだ (下巻P245)