言葉の宝箱0622【自分が錆だらけに思えてくる。慣れ、あきらめ、どうせという投げやりな気持ち。そういった錆に覆い尽くされ、無反応になってゆくのを想像して、恐ろしくなった。何をされても黙っているなんて、どんな目に遭ってもかまわないと言っているようなものだ】
観音様が見下ろす街で珈琲豆と焼き物のお店小蔵屋を営む杉浦草。その小蔵屋がある紅雲町の疏水の傍にヤナギショッピングストリートという小さな商店街で雨の日に買い物に出かけた草は寂しそうな男が落としていった手紙を拾おうとして、黒い車にひかれそうになり、誤って電器店の店先にあるマスコットのドリ坊を壊してしまい、電器店の店主の五十川からは高額の弁償を迫られるが、商店街の他の人たちが間に入り、弁償の件は棚上げとなる。草が気掛かりなのは拾った手紙。手紙の「帰っておいで」の文字は水に滲んで、器の牡丹餅の景色の様。誰から誰への手紙なのか。他にも小さな商店街には秘密があった。北関東のある街を舞台に老若男女が織りなす日々を小さな謎を軸にしたシリーズ第4弾。『牡丹餅』『貫入』『印花』『見込み』『糸切り』5話連作短編集。
・年寄りは動かなくなったら動けなくなる P14
・最初は頭にきたけどだんだん悲しくなってきた P35
・ものに恋する(略)
いいなと思って、ともに過ごすことをあれこれ考えると心浮き立つ。
もちろん、その時のみの思いだったり、高嶺の花だったりして、
考えるだけで終わることが多い。
本気で手に入れようとするなんて稀なのだ P111
・身体を置いて行けませんね(略)
身体を脱ぎ捨てては暮らせないから P137
・後悔はしていない――言葉とおりだとしても、葛藤はあったはずだ。
後悔すまいと前向きに生きてきたのだろう P150
・何歳でも、明日はわからないし、今を生きるのはおなじよ P176
・友人知人が多いからといって、
必ずしも心穏やかに暮らせるわけではない。
人の渦に巻き込まれ、行く先も、帰る場所も見失う。
そんな場合だってある P181
・おいしい話は、それを受けた人が得をするわけじゃない。
言い出した人が得をする P185
・やることなすことだめな時って、
情けないのを通り越して、笑っちゃうじゃないですか P194
・失敗が、またとない機会に変わる P197
・自分が錆だらけに思えてくる。
慣れ、あきらめ、どうせという投げやりな気持ち。
そういった錆に覆い尽くされ、
無反応になってゆくのを想像して、恐ろしくなった。
何をされても黙っているなんて、
どんな目に遭ってもかまわないと言っているようなものだ P200
・腹がくちくなって、栄養が身体に回れば、
好転する機会を待つ気力が生まれる P216
・生きているこの只今を肯定できないとは、苦しいことだ P243
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