言葉の宝箱0911【思い通りにいかないから人は変わることができる】
番組製作会社の元ADで、今は無職の田野倉敦、二十七歳。仕事先を探す中、同居人の先輩に強引に引き込まれ、一般人相手の映像制作会社を手伝うハメに。不本意な仕事ばかり舞い込むが、ある日、天才的な歌声を持つ少女が彼らのもとに表れる。番組製作会社のお仕事小説。
『映像屋本舗、はじめました』『犬も歩けば天才(災)に当たる』
『運命の一撃』『くちびるに歌を』『そして春が来る』の構成。
本書はこう終る。
「夢見たとおりの人生なんて、きっと退屈なものだ。思い通りにいかないから人は変わることができる。昨日の自分よりも、少しだけ柔軟になれる。そして、歪な形でも、思っても見なかった展開でも、その人なりの居るべき場所に、いつかは納まるときが来るのだろう。それがきっと、いきていくことの醍醐味というものなのだ」 P338
・玄関に入った途端、ふたりの間に火花が走った(略)
視線があった次の瞬間、抱き合ってキスをしていた。
靴を脱ぐ手間も惜しんで互いの衣服を剥ぎ取り、
そのまま玄関でことに及んだ(略)
酔った晩だけなら弾みだが、素面の二度目は関係の継続を約束した P42
・今日は酔いたかった。
酔って、やりきれない気持ちをただ忘れたかった。
それはどうせ一時的なものだとわかってはいたけれど P103
・ダサいとか、かっこいいなんてことは、状態なんだよ(略)
そう。一時的なこと。
だから、いつもかっこいいと言われているひとだって、
ちょっとしたことでダサいといわれたりするし、その逆もある。
状態だから、いつだって変えることはできるんだよ P146
・優しい?
優柔不断だって言うんじゃないの?(略)
自分より相手の気持ちを大事にする人だから世間では、
そういうのを優柔不断って言うんだろ P168