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新海誠×山田尚子の対談番組を見ましたか?

先日、NHKの某番組で新海誠山田尚子の対談を放送してたんだよね。

その内容自体は別にどうってことないものだったんだが、それより重要なのは、この対談を誰がセッティングしたのか、ということだよ。
もともと、この番組出演の目的は明確に山田さんの新作映画プロモーションであって、新海さんはただそれに付き合わされた形である。
問題は、新海さんがなぜわざわざ山田さんの新作プロモーションなんかの為にこういう協力をしたか、なんだ。
多分だが、これには絶対にこの人が関わってます↓↓

山田尚子監督(左)と川村元気プロデューサー(右)

皆さんよくご存じ、「新海誠を鬱の作風から脱却させた男」こと、川村元気プロデューサーですわ。
川村さん、今度は山田尚子のプロデューサーになってるのね。
この人はホント、どこにでも絡んでくるよな?
新海誠、細田守、新房昭之、超平和バスターズ(長井龍雪、岡田麿里、田中将賀)など、「こいつはゼニの匂いがする」というところを彼は見逃さないんだ。
逆に「内容は素晴らしいが興行収入は見込めない」というタイプ、たとえば湯浅政明片渕須直幾原邦彦のようなところには、全くもって近づこうともしない(笑)。

さて、この川村氏とは一体何者なのか?
まぁ、ミもフタもない言い方をするなら、「東宝の人」ですよ。

         <東宝>

皆さんは、東宝にどういうイメージをもつ?
同じ映画会社系でも、まだ東映の方はイメージしやすいだろう。
なんせ、東映アニメーションという制作会社があるわけだし。
いや、実は東宝にもTOHO animationというレーベルはあるんです。
ただ、ここはアニメの制作は特にやらないんだよ。
やるのは「制作」じゃなく、「製作」。
つまり資金調達や販促宣伝など制作以外の諸々を引き受け、「製作委員会」に東宝を食い込ませることこそが彼らの仕事といいっていいだろう。

皆さんもご存じの通り、アニメというやつは映画がヒットするとか、DVDがヒットするとか、そういうので生じた利益は製作委員会が得るという仕組みである。
ようするに、わざわざ必死こいてアニメそのものを作らなくても、アニメでおカネを儲けることは十分に可能なのさ。

東宝⇒アニメ製作でおカネを儲ける
東映⇒アニメ制作でおカネを儲ける

 <現在の映画界におけるアニメのドル箱>

【東宝】
新海誠、「名探偵コナン」、「ポケモン」etc
【東映】
「ワンピース」、「ドラゴンボール」etc

ひとつ誤解がないようにしておきたいんだけど、東宝も東映も映画配給会社である。
じゃ、東宝が配給してる映画は全て東宝が製作してるのかというと、そんなことはないんですよ。
たとえばジブリ、「鬼滅の刃」、「ドラえもん」、「クレしん」など、こういった作品は全て東宝が配給してる一方で、実は東宝の製作ではない。
川村氏をもってしても、さすがに食い込むことが無理という縄張りはあるんだろうね。

近年、「製作委員会方式があるから、現場アニメーターのギャラがいつまでも低いままなんや!」という怒りの主張をよく聞く。
そういう人たちは、おそらく川村氏のような人種を憎んですらいるだろう。
実際、彼は一部から嫌われてるかと。
多分、陰でこう言われてるはず。

「自分でアニメ作ったこともないような奴が、ちょっとプロモーションしたぐらいで根こそぎ儲け分を持っていきやがるのは絶対に許せん!      つーか、カネ返せ!」

そんなこと言っても、そういうシステムですからねぇ・・。
だけど、こういう声、私は心情的に分かる気もするなぁ。
なんかさ、

現場のアニメーター=善良な農民
製作委員会=法外に年貢を取り立てる悪徳領主


みたいなイメージが世間一般にあるじゃん?
いや、一応念の為に言っとくけど、実際にはそういう主従関係じゃないからね(笑)。

でも最近じゃ、農民が一揆を起こすパターン、ようするに自治独立を訴えてくるパターンがあるんですよ。
一番分かりやすいのが、ジブリの例。
彼らの最新作「君たちはどう生きるか」は、制作のジブリが自ら製作を単独で担うという離れ業をやってのけたんだから。
つまり、川村氏のような人種が一切近づけないようにしたんだね。
当然、「それじゃマトモにプロモーションできないでしょ」とツッコまれるところを、それに対し、「今回、プロモーションやめとくわ」と切り返したんだから凄いわ~(笑)。
で、結果的には興収は93億。
世界興収では196億ともいわれてる。
ちなみに「千と千尋」の世界興収は557億ともいわれてて、それに比べれば約3分の1といったところ。
しかし、今回は「千と千尋」の時とおカネの流れが全く違うんだよ。

<『千と千尋』の製作メンバー>

・徳間書店
・ジブリ
・日テレ
・電通
・ブエナビスタジャパン
・東北新社
・三菱商事
(製作委員会方式)

<『君たちはどう生きるか』製作メンバー>

・ジブリ(単独出資)

「千と千尋」は製作委員会方式ゆえ、売上で得た利益は上記企業の出資比率に合わせて配分される仕組み。
一方、「君たちはどう生きるか」はジブリ単独出資ゆえ、売上で得た利益はジブリが総取り。
単独出資は
・出ていくおカネが、めっちゃ多い
・しかし入ってくるおカネも、めっちゃ多い

というのが特徴で、最近「ジブリが過去最高益」という報道があったところを見るに、ぶっちゃけ「君たちはどう生きるか」は「千と千尋」の時以上に儲かったと見るべきなんだろう。

あと、こういうやり方は、この人もそうですわ↓↓

庵野秀明

エヴァンゲリオン」新劇場版シリーズもカラーの単独出資(インディーズ映画という扱い)で、ぶっちゃけ映画がコケれば庵野さんたちは破産してたらしいんだが、結果的にはシリーズ興収が214億とのことで、かなりの額がカラーに入ったと思う。
ジブリといい、カラーといい、川村氏あたりは
そういうことすんなや!ウチにも一枚噛ませろや!
とムカついてると思うが、今はそういう時流である。

細田守

あと、今もなお川村氏プロデュースの冠がつく細田守ですら、従来型の製作委員会方式を採らなくなったよね。
自身の会社・スタジオ地図と日テレとの共同で「スタジオ地図有限責任事業組合」というのを作ったらしく、そこが映画に絡む権利云々のコントロールをしてるらしい。
細田さん、なかなかのやり手やな・・。

それこそ昔なら、

・監督⇒芸術家、アーティスト
・プロデューサー⇒ビジネスマン、商人


というイメージがあって、「世俗に疎い芸術家」を「狡猾な商人」がうまいこと言いくるめて甘い汁を吸う、みたいなノリがあったと思うのよ。
だけど、今は庵野さんといい、細田さんといい、彼らはアーティストであると同時に自分で会社を経営するビジネスマンでもあり、断じて「世俗に疎い芸術家」ではないわけよね。
つまりは、川村氏のようなプロデューサー業ですら、決して楽してカネ儲けできてるわけじゃないのよ。
そこは分かってあげて。

とはいえ、川村氏って絶対アニメファンに愛されてないと思うのよ・・。
なぜって、この人「リア充臭」が凄いでしょ?
なんかオシャレだし、絶対乗ってるクルマもカッコいいやつだと思うんだよね。

そして基本、アニメオタクはリア充が嫌いです。


せめてダッサいキャラクターTシャツでも着てれば少しは好感度が上がるだろうに、この人、そういうの絶対に着ないから・・。

じゃ最後に、せめて皆さんには少しでも川村氏のことを好きになってもらう為、彼がかつてプロデュースを手掛けたTVアニメをご紹介しましょう。

「血界戦線」(2015年)

はい、BONES制作「血界戦線」ですよ!


これはOP曲がよかったっすね。

ここでBUMP OF CHICKENをブッキングしてきたあたりが川村氏らしいし、この翌年に大ヒットする「君の名は。」の前哨戦といったところか。

あと、上の画の通り、この作品は厨二色がハンパなかったよなぁ。
川村さんともあろう人が、これほどゴリゴリの厨二をやってくれたのが逆に親近感湧くでしょ?
はい、少し好きになりましたね?

じゃ、そこにダメ押しで、学生時代の川村さんの画像を見てもらいましょう。

うわ~、めっちゃ好きになったわ~。



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