プロ選定「日本アニメ史を変えた14作品」を知ってる?
皆さんは、「プロが選ぶ 日本のアニメの歴史を変えた スゴいアニメ14」というのを知ってますか?
これは2021年4月に放送された「林修の今でしょ講座」のスペシャル版で、表題の通り、業界のプロの人たち76名が選定したアニメ14作品を紹介するという内容のものだったんだ。
なぜか、あの河森正治さんもちゃっかり番組に出てたわ(笑)。
結構みんなこれ見てたと思うけど、未見の方もいると思うので、まずはその14作品というのをご紹介しましょう。
<日本アニメ史を変えた作品14選>
※ランキング形式でなく、番組で紹介された順です
①エヴァンゲリオン
②ドラえもん
③プリキュア
④進撃の巨人
⑤呪術廻戦
⑥BEASTARS
⑦えんとつ町のプぺル
⑧風立ちぬ
⑨君の名は。
➉ヴァイオレットエヴァーガーデン
⑪ガンダム
⑫マクロス
⑬ガールズ&パンツァー
⑭GREAT PRETENDER
さて、この「14選」を見て、皆さんはどう感じただろうか。
私はこの14作品のうち「プリキュア」以外全部視聴済みだけど、まぁ全部「傑作」といっていいものだと思う。
とはいえ、「日本のアニメの歴史を変えた」は、いくら何でも言いすぎだよね。
「歴史」って、そんな軽いものじゃないだろうに・・。
まぁ、番組に注目集める為のタイトル詐欺ってやつさ。
とはいえ、これテレビ朝日の番組だからテレ朝アニメのゴリ押し企画なのかと思いきや、案外そうなってなかっただけでも割と真摯な内容である。
ところで、「14選」という中途半端なセレクトは一体何なんだ?
10とか20とか、もっとキリのいいセレクトにすりゃいいのに。
多分、番組の尺の都合から入った選抜数なんだろうね(笑)。
基本、こういうのは作り手の都合である。
たとえば、河森正治さんの番組出演ブッキングできたから、よし、14選に「マクロス」入れとかなきゃ、みたいな。
この14選は、そういう感じの構成だろう。
といっても、一流アニメーター76名にヒアリングを実施したのは事実のようなので、必ずしもこの14選を過剰に低く見積もる必要はないかと。
でも実際のところ、この番組、ネットでアニメファンたちからめちゃくちゃ叩かれてたんですよ(笑)。
私の知る限り、中でも最も叩かれていたのが「えんとつ町のプぺル」の選出である。
これは、お笑い芸人・西野亮廣(キングコング)の原作/脚本/製作総指揮のもとに作られたアニメなんだが、どうもこの西野さんは異様にアンチが多いタイプらしく、西野嫌い=このアニメも嫌い、という構図になってしまったっぽい。
・・で、私が個人的にめっちゃウケたのが、この「プぺル」をディスってる人たちの一部が「見てないけど」と言ってたことなのさ。
これ、ディスってる人たちは作品見てないから、きっと気付いてないんだよね?
この「プぺル」が、「見てないのにディスってる人たち」の愚かしさを主題に描いた作品だということを。
めちゃくちゃうまいこと、西野さんのアイロニーにハメられてるじゃん?
私はこの作品視聴済みなんだが、率直に感想をいうと、めっちゃクオリティ高いアニメだと思うよ。
西野さん云々以前に
まず、STUDIO4℃の技術がエゲツないわ!
「日本アニメ史を変えた」は言いすぎにせよ、でもこの映像美は一見の価値が十分にあるかと。
もしも西野さんの冠が無ければ、もっと評価された作品かもしれないね。
・・いや、そうじゃないわ。
STUDIO4℃は敢えて、「みんながやりたがらない西野亮廣作品」を拾ったのかもしれない。
だってさ、「芸人が作ったアニメ」なんて、アニメファンであればあるほど<下>に見ちゃう傾向ってあるでしょ?
こういうの、一種の縄張り意識とでもいうのかな。
ヨソ者が入ってくんなや!的な、狭量なムラ意識。
だけど、STUDIO4℃って会社、敢えてそういう火中の栗を拾うクセがあるんだよね。
もともと創設者の田中栄子さん(元ジブリ)は、
「王道はジブリがやる。
私たちは側道を埋める」
という名言を残した人なんですよ。
この田中さんの「側道」意識は結構徹底していて、
今田耕司主演他、吉本芸人総出演「マインドゲーム」
明石家さんま企画/プロデュース「漁港の肉子ちゃん」
妙に吉本興業推しなんだよね。
ぶっちゃけると「マインドゲーム」も「肉子ちゃん」も「プぺル」も、興行的にはコケてるんだ。
しかし映画祭等のコンペで絶賛されることにより、じわじわと評価を上げた挽回型の成功例(?)である。
大体、「芸人が作ったアニメ」というのはイロモノ扱いされるものだよね。
今では巨匠扱いされてる北野武ですら、最初は「芸人が作った映画」ということで随分<下>に見られてたと思う。
でも、そういう偏見のない海外の方でまず激賞され、その高評価が逆輸入のような形で日本国内にも伝播したわけさ。
私、「芸人」って人種はもっとリスペクトされるべきだと思う。
彼らは漫画家や小説家と同じニュアンスで「本を書く」という作家じゃん?
凡庸な語彙力ではそんなの絶対できないし、しかも彼らの場合、客の反応を見て即興で修正を加えていく、というトンデモない瞬発力まで兼ね備えてるわけで。
その高度なスキルは、アメリカだとハリウッドが放っておかないわけよ。
トムハンクス、ロビンウィリアムス、ジムキャリー、ベンステイラー、こういったところが元芸人だってことをもう忘れてしまっている人すらいるだろう。
思えば、巨匠チャップリンにしてもそうだよね。
日本の場合、「映画史上最高の才能」というといまだ黒澤明の名が挙げられるものだが、じゃ黒澤の才能の何が凄かったのか?というと、彼は「脚本家として一流」「画家として一流」、つまり文才と画才の両方を兼ね備えた人だったんだよ。
そして、北野武もまた文才(彼は小説書いてるよね)のみならず、実は画才の方もある人である。
で、皆さん大好き(?)西野亮廣もまた、文才のみならず、画才もある人である。
やっぱ、文才/画才のある人のコンテンツって、そりゃ映画に直結して当然だと私は思うのよ。
よって西野さんが芸人だからとか、キングコングの漫才がオモロないとか、そんなしようもないことで「プぺル」というアニメを<下>に見るのはマジでやめてほしいわ。
そんなの、ずっと頑張ってきたSTUDIO4℃の仕事に対する冒涜に他ならないじゃないか。
まぁそんなわけで、まだ「プぺル」未見という方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。
見た上でディスるのは、あ、それは全然OK。
ディスられない映画なんて、むしろ健全じゃないからね。
もともとこれは絵本が原作だから、物語そのものが大きなメタファーなんですよ。
果たして西野さんは何を暗喩してるのか、煙突とは何か、星とは何か、腐るおカネとは何か、そういうところを考えながら見てみると面白いのかもしれません。
で、「プぺル」という映画もさることながら、私は冒頭にて触れた「日本のアニメを変えた すごいアニメ14」という番組の方も見てもらいたいね。
なんか色々、プロならではの着眼点というやつで14作品を解説してくれてたから。
そうそう、俳優の上川隆也さんとか出てたんだが、彼のオタクっぷりが少しガチすぎて(高校生時代、アニメ研究会に入っててアニメ作家志望だったとやら?)、番組内でも少し笑えるほどアニメ愛が濃かったんですけど。
確か、ニコニコの方にアーカイブされてたと思うので、興味ある人はご覧になってみてください。
この番組内で、特に私が「おぉっ!」となったのは、<「進撃の巨人」伝説の18秒>というやつだね。
ホント久しぶりにWIT STUDIO神の仕事を拝見し、「うむ、確かにこれだけは日本アニメ史を変えたという呼称もあながち大袈裟じゃないかも・・」と思ったわ。
じゃ最後に、そのシーンをご紹介して今回は締めることにしましょうか。