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【講演記録】~多賀町の食文化~
令和7年2月15日、多賀町立文化財センターで、たがのたべるをつなぐ~多賀町の食文化~についてお話しました。
多賀町文化遺産活用推進事業のなかの、普及交流事業で、地域のいいところを知る、体験するプログラムの7回目の講師となりました。
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たがのたべるをつなぐ~多賀町の食文化~
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YOBISHIプロジェクトとは
「よびし」とは
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よびしメンバー
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活動のながれ
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「多賀語ろう会」食部会の動き
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活動コンセプト・目的
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3つの活動
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01 知る
調査取材でどんなことを聞いている?
滋賀県立大学の市川秀之研究室と多賀町史編纂を考える委員会とで、2015 年頃から民俗聞取り調査に行っています。
食文化などを知るために、おもに料理を作っていた人、女性からお話をうかがっています。昔の思い出や、懐かしい食、家族などから教えてもらった食など、昭和半ば頃の暮らしを、主に下記項目を中心に聞いています。
① 生年月日(昭和3 年~ 20 年代生まれの人が多いです)
② 出身地(どこからお嫁に来られたか)
③ 年中行事の食(お正月・祭り・お寺の行事など)
④ 人生儀礼の食(結婚式・葬儀・村入りなど)
⑤ 普段の食(山菜・よく食べたもの・おやつなど)
⑥ 結婚の事
⑦ 出産の事
約10 年間で延べ50 か所ほど、そのほか個人宅やグループに延べ50 件ほど取材に行き記録しています。一部は『多賀町民俗調査報告書』に記録しています。また、『多賀町文化財保存活用地域計画』冊子に集落別の食リストを報告しています。
その中で出てきた、多賀らしい食の記録をとってレシピ作成をしており、現在約100 ほどレシピを記録しています。
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多賀町の概要と食文化の背景
岐阜県と三重県の県境に隣接するまちで、関西の文化だが、植生などを見ると、東海、北陸の種が混ざるところです。
2本の河川、芹川、犬上川があります。犬上川が川相集落で北谷と南谷に分かれます。地質は主に、芹川流域は石灰岩で、犬上川流域は湖東流紋岩なので、植生が異なり、生育する植生が違い、食文化にもわずかに影響しているように思います。
古くから多賀大社参拝の人でにぎわうまちです。戦後まもなくまでは、春の古例大祭には、鈴鹿の山を越えて早朝より晴れ着姿で山越えをしてくる岐阜の人、三重の人がたくさん歩いて多賀大社に来たと聞きます。
山を越えてすぐの集落、米原市醒ヶ井、岐阜県時山、三重県いなべ市、東近江市永源寺との婚姻関係もあり昔から交流があったようです。農耕牛の貸し借りも、山を越えて盛んにあったと聞きました。
約44 集落のなかで、自治体組織が消滅した集落1、集落に住民票はあるが無住集落は約14 集落。ほとんどが芹川上流の集落です。
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1 お雑煮を調べると多賀町の地域性がわかる?
お雑煮文化を調べたら地域がわかるのでは?関ケ原を境目に、雑煮の餅のカタチが東は角餅、西は丸餅と聞きますが、三重県と岐阜県と隣り合わせの多賀町のお雑煮はどうなっているのか聴き取り調査から集計してみ
ました。その集計結果を2023 年、多賀町敏満寺にある胡宮神社社務所で「正月よび」あなたの雑煮は?展示をしました。
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お餅のカタチは?
集計してみると、丸餅が約5 割、角餅が3 割でした。あとの2 割が「ハマグリ」??はじめて「ハマグリ」と聞いた時は、貝の「蛤」と勘違いしてしまいました。親指と人差指を合わせて丸にしたくらいのひと口サイズ、小さいお餅のことをハマグリと言うそうです。切るのは縁起が悪いので、小さく作るそうです。なぜお餅がハマグリと呼ばれるのか??海の無いこの地の謎です。長浜市など、北のほうで、ハマグリと呼ばれるようです
家族円満に過ごせるように丸餅にするというお家もありました。お正月のお餅の準備には、よもぎが入ったコワ餅、ダンゴを必ず準備されるお家もあります。これは、もち米の他にうるち米の団子粉が入っています
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お餅の調理方法は?
お雑煮に入れるお餅の調理方法は、焼くのが約7 割と多数でした。煮ると答えられた方は、雑煮の中に入れて直接煮ると、別で煮ると二通りあります。また、お雑煮の調理は、昔、囲炉裏でしていてマメになるように、豆で作ったお箸でお雑煮を食べた、と山の集落で聞きました。
雑煮の味付けは?
白味噌が多いと思っていたら、白味噌を使うお家が少数派で一割。しかも、よくお話を伺うと、白味噌を使うのは京都出身だからと言う方もおられました。家で作った味噌でお雑煮を作る方が半数以上ではないかと思われます。しかしながら、すまし汁の方も4 割ほど。この地域の方は、ほとんどの方が最近まで家で味噌を作っておられました。
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お雑煮に入れる具材は?
ダジャレが多く、お正月から縁起をかついでいます。里芋の親芋を入れる家が多く、その家の長男のお雑煮には「カシラになるように」と親芋を入れるそうです。しかし、親芋は小芋ほど美味しくなく、昔は入れていたけれど、不評なので親芋を入れるのをやめたという話も多く聞きました。「代々マメに「代々だいだい=大根」「まめ(元気)に=豆腐」」と言って、大根とお豆腐を入れるお家も。具材の切り方も、丸く生きるために輪切り、細く長く生きるために細切り、1 日は包丁を使わず大みそかに調理はすべて終わらせるというお家もありました。
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お雑煮を調べて分かったこと
言葉は関西。時々三重県いなべ市の方言がすこし混ざるところ。東の文化はあまり感じられません。しかし、お雑煮は4 割が角餅ですまし汁。丸餅白味噌が圧倒的に多い予想が外れました。食文化は思いのほか、東の文化が鈴鹿の山を越え入ってきている地なのだと実感しました。家代々のお雑煮ではなく、作る人(母)の味で作っていることが多く、集落ごと、谷筋ごとの地域性はわかりづらかったです。
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2 サルトリイバラから分かる地域性
サルトリイバラは、日当たりの良い山に生育する、落葉つる性の多年生植物。日本中の山中に分布しますが、西日本では葉っぱで菓子や餅を包む風習があります。多賀町内では、餡入り団子をサルトリイバラの葉で包み蒸していただきます。サルトリイバラの葉は、多賀町内では、ボンガラ、ガラタテ、イバラ、ガンバラ、ガンタチなど集落によって様々な呼び名があります。 端午の節句だけでなく、田植えシーズンに作ったとも聞きます。 また、お盆にお供えするのでぼんがら餅という集落もあります。
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素材
白い団子の部分は、米粉や小麦粉など様々です。また、餡の素材も、小豆、そら豆、枝豆と多様です。米粉でも、普段に食べるものは、出荷できないお米(クズ米)を粉にした「ゆりこ」で作るという方もおられました。
「ぼんがら餅」の生地は、3タイプあることがわかってきました。多賀植物観察の会で習ったぼんがらもちは、強力粉のグルテンを活かしたスライムのように粘りのある生地です。勝手に「1 麩まんじゅうタイプ」とタイプわけしてみることにしました。天ぷらの衣より粘り気のないサラサラの薄力粉、「2 きんつばタイプ」は餡子を楽しむもの。さらに、山の集落で習ったのは、米粉を挽いて作る「3 団子タイプ」。
餡は、小豆とそら豆の2タイプあります。昔、あずきは高級品で、普段は田んぼの「ほた(あぜ)」で作ったそら豆で餡を作っていたと聞きます。今では、そら豆で作る餡の方が珍しく、その美味しさには驚きます。
生地3タイプと餡2 タイプを掛け合わせた様々な組み合わせのものが町内にあります。
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小麦粉の背景・・・食も住も地産素材
昔、屋根の葺き替えに麦藁を使っていたと平野部で聞きました。藁ぶき屋根の藁とは稲藁ではなく麦藁で、屋根の葺き替えのために栽培していたそうです。山間部に行くと茅(かや)葺き屋根で、山に各集落の茅場があり、茅を収穫して家の屋根裏のツシにストックして葺き替えに備えます。村の中の隣組で今年はこの家の屋根を葺き替えすると決めて、順に隣組で協力して屋根の葺き替えをしたそうです。
「ぼんがら」に小麦粉を使う背景には、小麦栽培があったのだと気づきました。一昔前は、石臼で挽いているので、真っ白な粉ではなく、ザラザラした黒っぽい全粒粉のような感じだったそうです。
小麦が栽培されていない山間部集落では、米粉を使った団子タイプの「ぼんがら団子」を作っている傾向に気付きました。
「ぼんがら」は、多賀町独特の呼び方で、7 割の集落で「ぼんがら」と呼ばれています。ごく少数派の「がらたて」は彦根市での呼び方のようです。また、山を越えてすぐが三重県になるので、三重県での呼び方、「がんたち」や「いばら」が山間部の集落に伝わっているようです。
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3 ツマキ・チマキは山の食文化
山地にクマザサは生育します。ササの葉には優れた抗菌作用・防腐作用があります。
鮒ずしの蓋に使っていたとも聞いたことがあります。
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結ぶ素材
田や湿地があるほとんどの地域では、笹を結ぶのにイグサが使われています。田のない山間部集落、大君ケ畑では、ショロ(棕櫚シュロをショロと発音されています)の葉でむすんでおられます。また、隣町、甲良町正楽寺では、ツゲ(カサスゲ、スゲの事をツゲと発音)されています。
結び方
結び方は、人によって違い、葉先からスタートして根本で結ぶ、根本から葉先に巻き根元に戻るの2タイプあります。イグサで結ぶ場合、イグサの花を葉先できれいに見せて巻く方法をされている方もおられました。
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調理方法
笹は、茹でる派と蒸す、2 通りあります。茹でるときは、軸を上にして40 分ほどしっかり茹でます。またゆで汁は、クマザサエキスが出て体に良いので、お茶として飲んでおられます。
すえる(供える)
神さん棚と仏さんに据えます。また、犬上南谷の霜ヶ原や小原集落では、集落の神社の祭りに男性だけでチマキを作り神様にお供えするそうです。
芹川上流の河内集落では、12 本1対にして神社に供えたあと、山の段々畑の上の方に供えに行くそうです。そのほか、様々な集落で、田植え頃に作って軒下に干して乾燥させ、農繁期の忙しい時にお湯で戻して食べていたそうです。
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4 「イタドリ煮」は犬上川沿いの食文化
イタドリの煮物は、主に犬上川流域に伝わっています。イタドリは、4 月中旬に芽吹き、川沿いに生育するタデ科の野草です。学校の帰りにポンと折って酸っぱいのをかじって帰ったとよく聞きます。
採ってきたものを井戸水に晒して「けだし(酸味抜き・あく抜き)」をしてから、ニシンやジャコ、山椒などと炊いて醤油で味付けします。
また、塩漬けやぬか漬け保存にします。ぬか漬け保存にしたものを、井戸水や谷水で数日さらして、塩味を完全に抜いてから調理する方法は、たくあんの贅沢煮と調理方法は同じです。
芹川沿いにもイタドリは生えていますが、採ってきて調理していた方は少なく、犬上川沿いの集落の人から調理の仕方を聞いて作り始めたという人が多いです。
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5 よびしに欠かせない「うどんぬた」
多賀町久徳集落に伝わる「うどんぬた」は、辛子酢味噌にカマボコ・油揚・ネギ、「うどん」がたっぷり入っています。寄合の時に並ぶ鉢物に欠かせない一品です。「辛いもんは辛く、甘いもんは甘く、しっかり味付けする」さらに、「こんなもん辛子が効いてへん、もっと辛ろうして」と悶絶する激辛が好まれます。作る心構えは、「どんでら座ってゆったりせんならん」どっしりと腰を据えてゆったり作るもの。しかしながら、「へらへらしてたら力が入らん。怒ってんと」。辛子が多く入っていて、それを、辛いと言わずに見栄をはって食べるのもまた食文化。お葬式などの席で、出る定番の食です。ゴマを煎ってすり鉢で摺るだけでも1 時間ほどかかります。すり鉢を囲って摺るもの年長者の仕事…など、様々な言い伝えがあるようです。
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うどんぬたは平野部の狭い地域の食文化
久徳集落のほか、木曽、中川原でもうどんぬたを作っています。月之木集落は、昭和初期まで月之木素麺を数軒作っていたと聞きました。ひやむぎを入れると聞きましたが、素麺の間違いかもです。彦根市野瀬町周辺でもうどんぬたを作ると聞きましたが、木曽の方との婚姻関係もあるのではと思われます。また、多賀大社古例大祭で、馬頭人と御使殿は犬上川下流の賓台で御幣合わせの儀式があり、都恵(つえ)神社(彦根市竹ヶ鼻町北賓臺)国府君(こうのき)神社(彦根市犬方町)で儀式をしている関係も皆無ではなさそう。
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6 今のうちに記録しておきたい課題
今まで聞き取り調査で得てきた情報を、もう一度見直しまとめる必要があると感じています。また、冠婚葬祭の食で、葬儀の時の慣習は、知る人が減りますますわからなくなっており、早いうちに調査に出たいと考えています。
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02 伝える
展示で伝える
郷土料理を伝える手段の一つに、展示を定期的にしています。子どもたちにも見て分かりやすいように工夫しています。
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発信して伝える
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地域の食の話と郷土料理のレシピを載せています。
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イベントで伝える
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伝える部分、パッケージデザインもしました。
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03 つなぐ
ワークショップ
年間様々なワークショップを開催して若い世代や子供たちにつないでいます。
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メンバー研修
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地域学習支援
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行政の支援
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これからの課題
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