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「インスリンの働き」初級講座④ タンパク質の合成を促す

「インスリンの働き」初級講座
イントロ+まさかの修了書授与
②血糖値を下げる
③ブドウ糖の取り込み
④タンパク質の合成を促す  今回
⑤体脂肪の合成を促す
⑥語る前にセリフを覚えましょう
⑦インスリンが多すぎると困るわけ

インスリンには、「血糖値を下げるホルモン」というイメージがありますね。

でも、それ以外の働きもいろいろある……ことが分かってくると、インスリンの本当のすごさ、恐ろしさ(?)が見えてきます。

「それ以外の働き」って、
どんなものがあるのか?

体内の主要メンバーの皆さんに集まってもらい、こんな質問をしてみました。

あなたはブドウ糖以外のところで
インスリンが必要ですか?

骨格筋と脂肪組織は特に必要としています

全員そろってイエス!

なぜ全員一致なるかと言うと、インスリンはタンパク質の合成を強力にサポートしてくれるからです。

細胞の働きを支えているのはタンパク質。
タンパク質はすべての細胞にとって重要。

そのタンパク質をサポートしてくれるインスリンも、体内のすべての細胞にとって重要です。詳しく見ていきましょう。


アミノ酸の取り込みをサポート

タンパク質はアミノ酸が一列につながって作られているものですね。

食事から摂ったタンパク質は、消化管で分解されて、アミノ酸になります。

このアミノ酸を細胞の中に取り込み、タンパク質に合成…という流れになります。

インスリンは、取り込み合成をサポート

アミノ酸は、細胞膜にあるトランスポーターを利用して、細胞内に入っていきます。ブドウ糖のトランスポーターと同じような仕掛けです。

タンパク質は大きすぎるので、細胞膜を通過できない

アミノ酸トランスポーターは、インスリンなしでも稼働します。

でも、インスリンが作用すると、トランスポーターの数が増えるので、より多くのアミノ酸を取り込むことができます。

スーパーのレジ担当が増える感じ

特に骨格筋では、インスリンによって、筋肉量を増やすのに必要なアミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、クレアチンなど)の取り込みが優先的に促進されます。

だから、骨格筋さんは、「イエス3本」

筋トレでタンパク質と一緒に糖質を摂ることが勧められるのは、これが理由ですね。

糖質も食べておくと、アミノ酸が細胞に取り込まれやすい


タンパク質の合成をサポート

インスリンは、アミノ酸の取り込みを助けるのと同時に、タンパク質の合成も促します。

いつもと同じで、このインスリンの働きも、受容体にカチリとはまるところからスタート。

今回飛び出す活性物質は、mTORを活性化します。

mTOR(エムトア、エムトール)
細胞の分解、成長、修復、破壊など、幅広い代謝作用に影響する酵素

細胞内にアミノ酸(特にロイシン)が増えた時も、mTORが活性化される

活性化したmTORによって、タンパク質合成のスイッチが入り、細胞内で本格的にタンパク質が作られ始めます

mTORには、これ以外にもいろいろな働きがあります。しかも、非常に重要で影響力の大きなものばかりです。

これは、全身の細胞内で起こります


まとめますと……

細胞内でしっかりタンパク質を合成するには
ある程度糖質を摂って
インスリンの分泌を促しておいた方が良い

……ということですね。

筋トレ命の人もそれ以外の人も、「+糖質」の方がいい

食事からせっかくタンパク質を摂っても、それが体内のタンパク質になってくれないと意味がありません

その意味で、タンパク質の合成を促すインスリンの役割は重要です。

ところで、mTORは、タンパク質の分解作業(オートファジー)は抑制します。合成のスイッチを入れると同時に、分解のスイッチは切っているのです。

オートファジーについては、ぜひこちらの記事もご一読ください ↓ 。
インスリンが適量分泌されている分には問題ないのですが、過剰な分泌が続くと、オートファジーがずっと低調になり、とても困ったことになってしまいます。

「初級講座⑤」に続く……


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