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「私は朝ごはんを食べながら日本語を勉強しています。」
「オハヨ、オ~ハヨっ。アナタは週末何ですか?」
私「・・・・。週末何をしましたか?」
私の日本語の生徒の中に、質問されると自分が上手く答えられないので、開口一番逆に質問してくる人がいます。
そして仕方なく私が返事しようとすると、
「ワタシハ、ヒラ、ヒ、ヒロトン、ヒ、ヒルトンさんと、ティー、ティ、ティーヴィ―ドラマ, ニホ~ン!(←「日本」ってトコで日本人の私とハイタッチしたそうなハイテンション)、見ました、stay home. because, ヒルトンさんゴフ~ルー」
私「・・ゴルフ、だね、ゴルフ」
「Yeah~and雨~ so he came back. (そう、それで雨が降って来たので彼が帰って来ました)」
自分で聞いて自分で答えてるし・・・。
しかも英語に日本語の単語織り交ぜて・・・。
日本語をマンツーマンで習い始めて3年目の彼女。
そう、この彼女。
「センセ、きゅ、あめぇ~」
私「きゅ、じゃなくて きょう ね」
「きゅう、あめぇ~~。あと(と窓の外を指さす)」
「きゅう、あと、あめふうています」
・・・・・あの~・・・(;^_^A
何一つ正しくないんですけど・・・・・。
私「きょう、そとは雨がふっています。」
単語覚えず。それどころか発音も覚えません。
「今日」って単語(に限らず)、3年前の2回目のレッスンくらいからほぼ毎回(週二回)使わせているのに「きょ」(だけに限った事じゃないけど)という発音が未だにおぼつかないと言う…。
かと言って、100回間違ったら100回正しているのです。
「老師真的很厳格Very Japanese!I like it!(←先生のその厳しい所、すっごく日本人って感じ、それスキ!)」
イチイチ容赦なく訂正される事は、甚く気に入っている風。
・・・や、もう少し頑張って覚えようか?・・orz
「2,3回聞いても覚えられない」これはあるでしょう。
「5,6回聞いても覚えられない」
「10回聞いても覚えられない」
・・・まあ、これもアリと言われればアリなんでしょう、と思います。
でも「100回聞いて覚えられない」
それは覚えられないんじゃなくて覚えないんでしょう?
私は、正直彼女があまりにも日本語を覚えない事に腹も立ち、大きなストレスを感じていました。
だって、「外国語をマスターする」=「覚える」と言う事に他なりません。発音や、無限ほどにあるボキャブラリーは勿論、文法のルールも、全て「受け入れて」「覚える」事から始まると思っています。
「カードは使えますか?」
という文章が出て来ると、すかさず「What is『つかえ』(『つかえ』って何ですか?)」と質問。
「使う」という単語は以前にも何度も出て来ています。そしてまた「つかえ」で切るモンじゃないんだわよ、って話です。
でも自分がよく耳にする「ます」については、それを動詞の一部とせずに「自分の知っているワード」として認識するようです。
動詞が毎回出てくる度に、動詞の活用が苦手な彼女は、毎回私にその動詞の活用を一通り書かせます。
つかう(五段活用)
つかわない つかいます つかう つかえば つかおう
そして、それを一通り自分で読んで、
「OK、理解(わかりました)」と言い、出て来る動詞をその都度一つ一つ私に書かせる事で「自分が認識した」と見なしている模様。
次回また「使う」という単語が出て来ると、普通に「What is『つかう』(使うって何ですか)?」と言うのです。
・・って、全然覚えてないじゃないのよ!?( `ー´)ノ
じゃあ、イチイチ書かされる私の苦労は??
と思ったら、「コレ、前にも書いたでしょう?」と言って、その時の例文を言うと「Oh,Yeah,Yeah(あ~そうそう!)」と確かに一回目じゃないわ、と認めるのに一応役立っているようです。(覚えてない事実に変わりはないけど)
「ノートは自分で取りなさい。自力で書かないから覚えられない」と何度か注意しましたが、「そこまではしたくない」(←!!?)と言うのです。
「自分に余計なストレスは与えたくありません。」と。
いつまでも何も覚えてくれないあなたの方がストレスなんですけど・・・。
ま、確かに自分のしたくない事を我慢してやる人種ではないんだろうけど。
でも、全然覚えない割に、毎回毎回全て細かく根掘り葉掘り一文字ずつほどに詳しく解説させられる、のに!次回はきれいさっぱり忘れていて、私は「アレだけ詳しく説明したのに・・・?Σ(゚Д゚)!」という衝撃を毎回毎回受けるのです。
そして鼻炎持ちの彼女は、途中からいつも「アーックシューンッ!!アーックシューンッ!!エッヒョ~ンッ!!」と画面越しだからか遠慮ない派手なクシャミを私の真正面で繰り返し、痒いのかティッシュで鼻をグチュグチュと左右に揺らしながらお手伝いを呼びつけ、今自分が鼻をかんだばかりのティッシュの山を、そのままお手伝いの手に押し付けながら、鼻炎の薬を持ってこいと言いつけ(その服用、授業前にやって置いてくれんかね?)私の言葉はかき消され、発音練習もスルーで、かと言って中断しようとすると、私に気を遣わせまいと思うのか、中断する時間が勿体ないのか、「Go ahead!(そのまま続けて)」と言うのです。
・・や、Go ahead!って言うか、アンタが聞いてくれないと、リピートしてくれないと意味がないんすけど・・(^-^;
説明している真っ最中でも「Oh, Ha〜i〜Baby💗」と犬に話し始めたり、隣に来たお手伝いさんに声をかけたり、授業全体がいつも何だかバタバタ浮足立っています。
・・全然集中しないな〜・・┐(´д`)┌ヤレヤレ
これっていわゆる学習○害?という気持ちを抑えつつ、このまま何も覚えないままなんだろうか、という気持ちと、でもボキャブラリーが乏しいとは言え、彼女は普段の生活で英語と北京語を使いこなしていますから、日本語だって覚えられないはずはないという気持ちが、私の中でもせめぎ合います。
そんな彼女にもある時変化が訪れました。
オンライン画面を開いた途端に
「オっハヨー、オハヨっ、モグモグモグ…」
とご飯を食べている最中だった彼女。
(注: レッスン開始時間10:30~)
対面の時は、そのまま彼女が食卓で朝ごはんを食べるのを横のテーブルで待って、食べ終わった彼女が移動して来てから授業スタートでしたが、オンラインだから食べながらでいいや、と思ったみたいでした。
人にモノ教わるのに朝ご飯食いながらってか?!
「朝ごはんは授業前か授業後にしてくれない?」
最初はそう言いました。でも子供の学校なら通用しても、こちらは雇われの個別レッスン。基本的にお金を払ってる方が強い的な空気が漂っています。
「Oh, Yes, I'm Sorry!」
と言ってた彼女でしたが、その次の時に画面を開くと相変わらずモグモグしていて
「Sorry, teacher〜、but I just woke up! buraburabura・・・(センセーごめんなさい、でも私今起きたばかりで・・。でも朝ごはん食べないと私は糖尿病で血糖が下がるとなんちゃらはんちゃらで)」と、自分にはご飯を食べる理由があると説明して、
「by the way(ところで)、I just woke up は何て言いますか?」
そもそも、フリートークできるレベルではないので、教科書に合わせてレッスンするのですが、それだけだと彼女の集中力が全く持たず、授業開始後は彼女の気の向くまま、彼女の表現したい事をこのまま話させておきます。無理やり始めようとすると自分が如何に気が進まないかを延々説明し始めるからです。
「私は今起きたばかりです。」
「~たばかり」という言葉のニュアンスが、今まさに自分の表現したかったニュアンスにすごく近い!と思ったのか、彼女は途端に機嫌がよくなり、「Oh~Wao!ばかりぃー!!」と騒いでいます。
私は少しばかり うんざりした気持ちで
「私は朝ごはんを食べながら、日本語を勉強しています。」
と、皮肉をこめて言いました。
すると、彼女は私の言葉が理解できず、きょとんとした顔でもう一度言ってくれと言いました。
私が何度か繰り返して、意味を説明すると
「Oh~~!!な~がら~~~~~!!💗」
「ながら」って何て便利な言葉なの!こんな簡単に複数の動作を平行している事を表現できるなんて!!!
興奮してテンションマックスになった彼女は、私が嫌味を言ってる事にも気づかず、シャクシャクと大きな音を立てながら食べていたシリアルとバナナの乗ったヨーグルトを、画面越しに私と乾杯するように高々と掲げました。
「ばかり」と「ながら」のお役立ち度と、音の並びの可愛さが気に入ったらしく、何とその日をきっかけに、彼女の日本語に対する抵抗感が薄れて(←3年がかり?)集中できずに突然席を立ったり電話をし始めたりするのも、朝ごはんを食べながらの状態も変わりませんが、日本語の吸収力が格段にアップしました。
よ、ようやく・・・!彼女の日本語も上達し始めた??!という中、
「センセー、外国語を勉強する、という刺激がボケ防止にいいらしいです。だから私は先生が根気強く教えてくださって、とてもいい刺激になっています。この苦痛が自分の脳を活性化してくれるんだと思えばお安いものです。」
ぬ!
・・・そっか~集中力もないし、授業に合わせて自分の起床時間を調整するという気持ちもないし、自力でノート取ろうって気もないけど、ボケ防止にこうしてとりあえず「日本語レッスンをやってる」風なのが彼女にとっては、それで十分って事?( ̄▽ ̄;)
これまでの他の生徒と比較して「これだけやってるんだから、このくらいできるようになってもらわないと」なんて決めつけて躍起になる問題でもないんだな~と言うのを3年越しで体感した私ですが、これ以降のレッスンでは毎回彼女が口をモグモグさせながら嬉々としてこの一言を言います。
「ワタシは朝ごはんを食べながら日本語を勉強しています」と。
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