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「フェラーリ」:モータースポーツに精力を尽くした創業者エンツォ・フェラーリ。フェラーリ一家の暗い歴史はゴッドファーザーっぽい。

<あらすじ>
1957年、イタリアの自動車メーカー、フェラーリの創始者で59歳のエンツォ・フェラーリ(アダム・ドライバー)は重大な局面を迎えていた。妻ラウラ(ペネロペ・クルス)と設立した会社は経営の危機に瀕し、1年前、難病を抱えた息子ディーノの死により家庭は破綻状態。その一方で、密かに愛し合っていた女性、リナ・ラルディ(シャイリーン・ウッドリー)との間に生まれた息子ピエロを認知することはできない。エンツォは起死回生を賭け、イタリア全土1000マイルを走る過酷なロードレース“ミッレミリア”に挑む。

KINENOTEより

評価:★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

世界のきっと誰もが知るイタリアのスーパーカーの雄・フェラーリ。その創業者エンツォ・フェラーリを取り上げた本作は、1950年代後半にフェラーリが会社の危機となった一時期を描く作品。僕自身、F1というモータースポーツを思春期頃(ちょうどフジテレビによる地上波放送があり、セナ、プロスト、マンセル、中島悟など、F1ブームの頂点だった時代)から、テレビ放送は完全に消滅(BS放送で一部継続中)し、DAZNでのインターネット中継になっている(一部アメリカで大人気となっているNetflixの密着ドキュメンタリー含め)現代までずっと観ている身としては、スーパーカーというより、モータースポーツの雄というイメージが強いです。その意味で本作は興味深く観れたものの、フェラーリという人物と、エンツォの遺志を継いだフェラーリという会社がどのようなものか前知識がないと理解しずらい話なのかなと思ったりします。

僕も知っていること、調べながらのことも含めて解説すると、イタリアのフェラーリという会社は本作の主人公によるエンツォ・フェラーリが創業したものの、もともと彼は1920年代に同じイタリアのアルファロメオというチーム所属ので活躍したレーサーでした。レーサーであると同時に、アルファロメオというディーラーのカーレース部門の担当者だった彼は、本作でも取り上げられている息子の誕生を機会に独立し、当時のレース仲間とともに「ソチェタ・アノーニマ・スクーデリア・フェラーリ」を設立。1930年代にはドライバーを引退し、1938年にフェラーリ自体は一旦ほかの会社に吸収合併されるものの、第二次世界大戦中に別会社として再スタートし、戦後に再びカーレース事業に参入。順調に成長を遂げ、1950年にスタートしたF1(フォーミュラー1)にも初年度から参入するということになってきます。ところが、1950年代後半に跡継ぎと思っていた息子ディーノが筋ジストロフィーで早逝。本作でも描かれている正妻と愛人とのゴタゴタや、量産車を中小企業的な手工業で作り続けたいた生産性の低さ(この職人技にほれ込む人も多いのですが)、本作のメインとして描かれるイタリア縦断の公道レース「ミッレミリア」での大事故やその後に起こるメカニックたちのストライキなど、数々の苦難がフェラーリを襲うことになるのです。

今でもフェラーリというチームが各レースで続いていることや、もちろん高級ディーラーとしてのフェラーリというメーカーも残っているので、この経営危機は無事に乗り越えたものの、家族内の不和というのはいびつな形で残り続けているのはフェラーリ一家の暗い一面を残しているのかなと思います。この歴史が(イタリアが舞台ということもあり)ゴッドファーザーっぽい暗い重厚感のあるドラマになっているのが、本作の魅力的な部分かなと思います。それに「ヒート」(1995年)や「インサイダー」(1999年)など男っぽい無骨なドラマを生み出したマイケル・マン監督の老練な力量が十二分に発揮されていると思います。が、同じマンが製作総指揮として携わった「フォードVSフェラーリ」(2019年)のようなカーレース場面(ミッレミリアはあるものの)が少なく、おまけにフェラーリ一家の人間ドラマが中心になっているのでフェラーリの創業の歴史を知らないと分かりづらいので、モータースポーツをメインに観た人はちょっとガッカリさせられるかもです。。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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