「幸せ」か「仕合せ」か? 歌「糸」から「しあわせ」を考える
「おお、『幸せ』ではなく『仕合わせ』なんだ…」
「しあわせ」という言葉の解釈として、「幸せ」ではなく「仕合わせ」という表現があることを最近知りました。そのきっかけは中島みゆきさんの「糸」という歌です。この歌の歌詞を読んで見た時に、初めてこの読み方を知りました。
この「仕合わせ」という言葉にはどんな意味があるのでしょうか。また「糸」という歌にはどんな思いが込められているのでしょうか。
改めて「しあわせ」について考えます。
「しあわせ」の意味
「しあわせ」と聞くと、大半が「幸せ」という漢字を想像します。私も最近までこの漢字しか思いつきませんでした。
しかし、辞書で調べると確かに「幸せ」以外の表現が記されています。
しあわせ【幸せ/仕合わせ】
1 運がよいこと。また、そのさま。幸福。幸運
2 その人にとって望ましいこと。不満がないこと。また、そのさま。幸福。幸い。
3 めぐり合わせ。運命。
4 運がよくなること。うまい具合にいくこと。
5 物事のやり方。また、事の次第。
大半の人が連想する「しあわせ」は幸福としての幸せを連想されるのではないでしょうか。心が満ちた状態、望ましい環境で不満がない状態に対して人は幸せ・幸福を感じるのだと思います。
もう一つの意味合いが「めぐり合わせ」「運命」としての意味。この意味の背景にあるのは「仕 + 合わせる」、つまり様々なことが重なり合って、物事は成り立っているということです。良いことも、悪いことも、全て含めて「しあわせ」=「めぐり合わせ」「運命」という風に解釈できます。
そもそも、「幸福」としての「しあわせ」も、一人で得られる感情ではないですね。周りの人達との助け合いや感謝の元に、ようやく望ましい環境にたどり着けるのではないかと思います。
そういう意味では、いずれの意味も、人と人とがめぐり合って、感謝し合うことが「しあわせ」の根底にあるのかもしれません。
「糸」の歌詞を読み解く
中島みゆきさんはメッセージ性の豊かさと、力強い声量を持った非常に魅力的なシンガーソングライターです。彼女の歌声を聞くと、時には神々しささえ感じる時があります。
「地上の星」「ファイト!!」などはテレビ番組で何度も引用される名曲中の名曲ですね。そんな中島みゆきさんのこれまた素晴らしい曲「糸」をご紹介します。
「糸」
なぜ めぐり逢うのかを
私たちは なにも知らない
いつ めぐり逢うのかを
私たちは いつも知らない
どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語
縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かを
暖めうるかもしれない
なぜ 生きてゆくのかを
迷った日の跡の ささくれ
夢追いかけ走って
ころんだ日の跡の ささくれ
こんな糸が なんになるの
心許(もと)なくて ふるえてた風の中
縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布は いつか誰かの
傷をかばうかもしれない
縦の糸はあなた 横の糸は私
逢うべき糸に 出逢えることを
人は 仕合わせと呼びます
中島みゆき
「あなた」と「私」が運命的に出会って支え合う情景が浮かぶ、素晴らしい曲ですね。1998年にはドラマ「聖者の行進」の主題歌でも使われていました。また今年はこの歌をベースに作られた映画「糸」も8/21から全国でロードショーされていますね。
この歌の最後の一節に「仕合わせ」という言葉が登場します。この歌はめぐり逢い、出逢いを描いており、正に運命やめぐり合わせをストーリーに描かれています。
最後の一節は「逢うべき糸に出会えたことを人は運命と呼びます」に言い換えられますね。「運命」にしてしまうと意味は限定されてしまいますが、「仕合わせ」にすることで聞き手に「幸せ」を連想させています。そして、歌詞を読み込んだ時に「仕合わせ(めぐりあい、運命)」の意味を知ります。そして、歌全体ではめぐりあいや運命を語っている。そこで、なぜ「幸せ」ではなく「仕合わせ」と表現したかに納得する。非常に秀逸な歌詞ですね。
「縦の糸」をどう考えるか
この歌詞では横の糸は「わたし」です。これは自分自身なので変えようがありません。一方で縦の糸は「あなた」と表現されていますが、これは何も人に限った話ではないように思います。例えば、仕事、趣味、モノなど、自分とめぐりあうあらゆるものに置き換えられるのではないでしょうか。
いつめぐりあうかはわからないけど、いつかどこかでめぐりあう。そんな自分と何かの関係を描いているようにもとれます。そしてその2つは「いつか誰かの傷をかばう」=「人の役に立つ」のかもしれません。
まとめ
私は今回はじめて「仕合わせ」という言葉に出会いました。めぐり合わせや運命という言葉は誰の人生にも当てはまる普遍性のある言葉です。「幸せ」という一般的な理解よりも、人との関係や、絆、感謝などを内包した非常に豊かな意味を感じる言葉かと思います。
そんな言葉を知るきっかけを与えてくれた「糸」という歌は、誰か大切な人との出会いや関係を描いているともとれますし、自分と「何か」の関係を描いているとも拡大解釈できます。
人生はたくさんの人やモノとのめぐり合わせの連続です。運命的なめぐり合わせは、良いこともあれば時に悪いことも含んでいます。その一見悪いと思えるめぐり合わせも、人生の経験を積み、人間として成長した時、若い時には理解できなかった意味を理解できたりします。
日々自分と出会う様々なモノや人に対して、「これは私にとって縦の糸か?」と問うてみるのも良いかもしれません。放っておけば簡単に通り過ぎていた何かに意味を見つけて、自分の人生において大切な何かに変わっていくかもしれません。
目の前を慌ただしく通り過ぎていく毎日の中で、自分にとっての「仕合わせ」を掴んで、「幸せ」を感じていけるといいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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