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唯一無二のブックレビューの書き方⑩


⑩続続・「日記」とは? 旅人は新たな目を手に入れる


前回前々回「日記」の工程のひとつめである「経験を書く」ことについてお話をしてきました。
物語に感動するのは、そこに自分の経験を根拠とする「共感」があるためであり、さらに「共感」には様々なパターンがあるという内容でした。

また、「共感」とは「物語の中に自分の人生と重なる部分を見つけた」ということであり、それは「自分の人生を送りながら、同時に物語の中を旅している」状態だともお伝えしました。
こうして、読み手は「物語の旅人」になるのです。

今回は「物語を旅する」ことが、読み手である旅人にどんな影響を与えるのかについてお話をしていきます。

再び、「かぐや姫」に憧れるAさんの例です。

Aさんは『竹取物語』を読んで「自分のペースで婚活しよう」と決意します。
それは、かぐや姫を通して「親から結婚へのプレッシャーをかけられている自分」の姿を認識したからです。

実はこれは、かなり高度な自己分析です。

私たちは、特にコンプレックスや葛藤、迷いの中にある時に自分自身を冷静に見ることが難しかったりします。

しかし、本の中に「もうひとつの自分の人生」(Aさんにとってのかぐや姫)を見つけることで、自分の人生を客観的に見つめることができるようになるのです。

これが、「旅人の目」です。

物語の世界を旅するとき、私たちは実際の生活から少しだけ脱出することになります。
そうすることで、俯瞰で自分の人生を見る目を手に入れるのです。

「旅人の目」とは、読み手が「物語」という異世界の旅人になったことで得られる、自分に対する「客観的な視点」のことです。

そして、ひとたび「旅人の目」を手に入れた旅人は、もはや、かつての自分に戻ることはできません。
なぜならば、「自分はどんな存在なのか」「自分が置かれてる状況とはどんなものなのか」ということを知ってしまうからです。
物語を鏡に、自分の姿を見てしまうのです。

鏡に映った旅人は、そこにどんな姿を見つけるのでしょうか。

いずれにせよ、己の姿を知ってしまえば、再び「知らなかった」自分に返ることはできません。
私たちは、一度知ってしまえば、知らなかった自分に戻ることはできない生き物だからです。

物語という鏡を見つめ、己の姿を知ってしまった旅人は、今までの人生を失い、生きる世界を変えざるを得なくなります。

旅人は、来た道を引き返すことはできないのです。

次回は「日記」の工程のふたつめである「感情を書く」についてのお話です。「唯一無二のブックレビュー」の最後の工程です。

【結論】

Q.「物語を旅する」ことで「旅人」はどう変化する?

A.自らの人生に対する「客観的な視点」となる「旅人の目」を手にいれる。「旅人の目」は高度な自己分析を行わせる。

→⑪続続続・「日記」とは? 旅人の世界は反転する

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