唯一無二のブックレビューの書き方③
「前座」「場面」「日記」の3つで書けます。
A「ねーねー! この前すっごい面白い本読んだの!」
B「へー、どんな本?」
A「なんかね、①すごい美人の女の人のお話なの」
B「ふーん、それで?」
A「でね、②親に玉の輿に乗りなさいって言われてお見合いさせられてプロポーズされまくるんだけど、全部断るの」
B「えっ、かっこいいね」
A「③うちの親も結婚しろってうるさいからさあ・・・・・・でも、このお話読んで、やりたくないのに無理に婚活するのは止めようって思ったの!」
なんだか、その辺りのカフェから聞こえてきそうな会話ですね。
でも、これ、ちゃんとレビューです。
何の物語のレビューかおわかりでしょうか?
日本最古の小説「竹取物語」です。
おいおい、ですよね。
Aさんは「すっごい面白い本」と言いつつ、例えば竹取物語の時代背景(平安時代初期の貴族文化)を説明していません。
それどころか、おそらくこの物語の最も重要な部分「主人公の女の子(かぐや姫)は、竹の中から産まれてきた」ことにすら触れていません。
Aさんにとって「竹取物語」は、
「すごい美人の女の人が、嫌なお見合いを断りまくるという、最近親から結婚しろと言われている自分にとって励まされる話」
なのです。
これがブックレビューとして正解なのか、というと割と駄目です。笑
このあと、Aさんのレビューを聞いて「竹取物語」を読んだBさんは、絶対びっくりですよね。恋愛小説かと思ってたら時代絵巻なんですから。
でもAさんは、3つの点で非常に素晴らしいレビューをしているのです。
ひとつめは「自分がこの物語のどこを面白いと思ったか」がわかっていることです。(この場合は、かぐや姫がプロポーズを断りまくるところが面白いと思ったのです)
ふたつめは「どうして、それが自分にとって面白いのか」の理由を言っていることです。(自分も最近親から結婚についてあれこれ言われるので、プロポーズを断るかぐや姫の姿に励まされるのです)
みっつめは「面白いと思ったポイントを理解してもらうために必要な、物語の前提」を過不足なくきちんと伝えていることです。(かぐや姫がプロポーズされまくるほどの超美人なことです)
さて、レビューは「前座」「場面」「日記」の3つで書けるというのが今回のテーマです。
これに従って、Aさんの会話をそれぞれのパートに振り分けてみましょう。
「自分がこの物語のどこを面白いと思ったか」
→②親に玉の輿に乗りなさいって言われてお見合いさせられまくるんだけど、全部断るの
=「場面」(一番伝えたい、物語の中の一場面。かぐや姫が求婚する貴公子たちを断りまくるところ)
「どうして、それが自分にとって面白いのか」
→③うちの親も結婚しろってうるさいからさあ・・・・・・でも、このお話読んで、やりたくないのに無理に婚活するのは止めようって思ったの!
=「日記」(自分に起きた出来事と、それに対する自分の思い。親から結婚へのプレッシャーを加えられているという自身の経験と、それに対して気にせず自分のペースでいこうという気持ち)
「面白いと思ったポイントを理解してもらうために必要な、物語の前提」
→①すごい美人の女の人のお話
=「前座」(時代背景も、かぐや姫の生まれも、Aさんには関係ない。ただ、「かぐや姫が求婚されまくる」根拠となる情報=美人であること さえ言えたらいい)
こうして見ると、Aさんの「竹取物語」のレビューは中々悪くないようです。少なくとも、他では読めない「唯一無二のブックレビュー」であることは間違いありません。
Aさんは、自分自身の思考や経験を介して、物語を解釈し、味わい尽くした点で「素晴らしい読者」であり、その体験を人に伝えた点で「素晴らしいレビュアー」なのです。
【結論】
Q.何を書けばレビューになる?
A.面白かったポイントを伝えるために物語の前提を紹介する「前座」、作中のどこが面白かったかをピンポイントで具体的に取り出す「場面」、それが面白いと思った理由を経験と感情から語る「日記」の3点が書ければ、レビューになる。
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