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【読書感想】ぼくの美術ノート 原田治著
書籍情報 タイトル「ぼくの美術ノート」
著者 原田治
出版社 亜紀書房、2017刊
本書は、私がnoteに記事を書くにあたり、文章のお手本としている本の一つです。
著者の原田治氏は、イラストレーターでオサムグッズのデザインで有名な原田治さん(1946〜2016)です。
この本は「芸術新潮」(新潮社) 2007〜2010年に掲載されたコラム「Osamu’s Invitation」をまとめたものです。
本書では、原田治氏がご自身の審美眼に基づいて、良い、好きだと感じる美術作品や作家を、タイトルごとに一つずつ取り上げて紹介しています。
一タイトルの字数は1200〜1500時程度で、けして長い文章ではないのに、著者の博識が反映されて内容は濃く、特に日本の芸術全般に関する造詣の深さ、日本的美に対する感性の鋭さに驚かされます。
作品の描写や、そこから受ける印象の文章表現が的確で、こういうレビューを書きたいものだなあ、と私は思います。
また、通説ではこうだけれど、自分はこう思う、という論旨が明確で、時にやや辛口ですが、納得して面白く読むことができます。
取り上げる題材は、アメリカの現代アート、フランス映画、シスレーの風景画、北園克衛の文庫カバー絵、歌舞伎、やきもの・ガラス器、漫画「いじわるばあさん( 作 長谷川町子)」「ギャグゲリラ( 作 赤塚不二夫 )」などジャンル問わず多岐にわたっています。
特に、小村雪岱のことがお好きらしく、本書では四本の記事が収められています。
あとがき「Afterwards 」には、自身が小村雪岱の特集号を芸術新潮に提案して実現したことを、「快挙でありました」と述べています。
本の装丁や新聞小説の挿絵で名を馳せた小村雪岱が、歌舞伎や映画の舞台装置を考案したり、美術考証や舞台背景を描き、美術監督のような仕事をしていたとは、本書で初めて知りました。
「藤娘」は、六代目菊五郎が、大津絵の画題に材をとった長唄の古い舞踊をリメイクするため、新たに舞台装置を雪岱に依頼したものです。-中略- 「藤の精」となって踊る菊五郎の娘姿を、舞台で小さく可憐に見せる工夫がなされ、舞台いっぱいに大きな藤の花を吊り下げ、巨大な松が中央に配置されています。
素人考えでは、役者を大きく見せるのが舞台美術の役割のように思われて、背景が目立ちすぎてはいけないのではないか、と思ってしまいますが、掲載の写真を見るとなるほど、華やかな中に役者が目立つ、横長の絵巻ものを見ているような舞台美術です。
岸田劉生や、Afterwardsでは長谷川等伯《柳橋水車図屏風》の魅力について自説を展開されいて東洋的な美意識の高い原田治氏ですが、オサムグッズから受ける印象は真逆で、色使いやデザインは日本人離れして明るくポップで、アメリカやフランスで作られた雑貨のようです。
他のファンシーグッズに比べて、おしゃれで大人っぽくて、私が中学、高校生の頃は、文房具や手提げ袋を「オサム」でそろえて愛用していました。
オサムグッズが景品だったドーナツ店には、景品欲しさによく通いました。
著者の公式ブログ「原田治ノート」(はてなブログ) では、雑誌コラムよりもっと本音に近い形で、自分の好む物や交友関係について書かれていたのが面白く、フォローして読んでいました。
2016年11月19日の記事を最後にブログの更新が途絶え、私が訃報をメディアから知ったのは、その後数年経ってからでした。
いまでもブログは開かれていて、読むことが出来ます。
以上。
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