2024年上半期の本ベスト約10冊
2024年の上半期もたくさんの本と出合えました。せっかくなので、2024年6月末までに読み終えた本(刊行年問わず)の中から、特に好きなものを選んでみました。
なお、2024年の読了・本関連ツイートはこちらにまとめています。あなたの積読拡充のお供にぜひどうぞ👇
※以下、全て敬称略&順不同。読了ツイートに感想を加筆しているものもあります。
※本のタイトル後に発行年を記載。
ピュウ(2023)
キャサリン・レイシー著/岩波書店
本作については、こちらのエッセイで取り上げています👇
七十四秒の旋律と孤独(2020)
久永実木彦 著/東京創元社
2023年にpixivで開催されたSF短編コンテスト「さなコン3」にて、拙作『天の牛蒡』が二次選考を通過し、その際に著者の方がフィードバックコメントを下さったご縁があって知った作品です。知れてよかった……!
地下図書館の海(2019)
エリン・モーゲンスターン著/東京創元社
この世界からは出ていくけれど(2023)
キム・チョヨプ著/早川書房
マチルド・ローランの調香術―香水を感じるための13章(2023)
マルチド・ローラン著/白水社
どんなジャンルにも、自分の信念が故に相手の好きなものを見下す・批判する言動をするファンは居ます。それは残念なことに香水でも同じこと。
でも、実際に最前線で奮闘している一流の人は違うなと、この本で実感しました。著者が重要視するのは他者を蹴落とす愚かな優越感ではなく、“実現したい世界観(エレガンス)の実現”、“香水業界の発展”、“香りで得る純粋な喜び”。それでいて経営感覚は損なわず、且つ妙にツンツンした意識高い系ではなく自然体で香りと向き合う姿勢がとても素敵でした。
特に、「我々はおおよそどんな香りでも、自分に納得のいく価格で見つけることができます」(三七頁)という考え方は、私が物を買う際の指標の一つになりました。他人がどう言おう・感じようと、自分が納得できる買い物こそが一番心地いい。物と自分という一対一の関係で得られる喜びと納得感を大事にしたい。香水だって何だって、そうやって選んでいけたら素敵ですね。
過去を売る男(2023)
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ 著/白水社
2022年に『「その他の外国文学」の翻訳者』を読んで以来、ポルトガル・アンゴラ文学に興味を持つようになりまして、「木下眞穂 訳」の文字を見ると反射的に読みたくなります。
なんでまたポルトガル……? というと、以前私はポルトガルに出かけたことがあり、CD屋さんでいい音楽を色々教えてもらった思い出があるからです。(当時の様子はこちらのエッセイにて👇)
また、たくさんの人におすすめしたい本『「その他の外国文学」の翻訳者』については、以下のエッセイで詳しく取り上げています👇
木曜殺人クラブ 逸れた銃弾(2023)
リチャード・オスマン著/早川書房
シリーズ第一弾『木曜殺人クラブ』については、こちらのエッセイで取り上げています👇
マーリ・アルメイダの七つの月(2023)
シェハン・カルナティラカ著/河出書房新社
過去を受けて現在の自分が奮闘し、結果として(その先に自分が居るかどうかはわからないけれど)未来に何かを託す……という主人公の姿がとても好きです。その“何か”がどれだけささやかなものであったとしても、これまでの行動一つ一つが積み上げた大切な何か。全部無駄だったわけではない、「何もなかったわけじゃない」と思えるのは、本当に美しいなあと感じました。ヒリヒリする題材だけど、メッセージはとても優しい物語。
ある晴れたXデイに: カシュニッツ短編傑作選(2024)
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/東京創元社
第一弾『その昔、N市では: カシュニッツ短編傑作選』については、こちらのエッセイで取り上げています👇
第一弾も第二弾も、表紙の雰囲気がかなり大好き。
関心領域(2024)
マーティン・エイミス著/早川書房
映画についてはこちらのエッセイで取り上げています👇
私は一般公開より数か月前に映画を観たのですが、公開のタイミングになってもまだ『関心領域』を鑑賞した時の感覚が残っていました。本当に忘れられない作品に出合ってしまったな……感じています。
月とコーヒー(2019)
吉田篤弘 著/徳間書店
実はこの本は喫茶店で読んだので、更に思い出深い読書になりました。
Blue(2024)
川野芽生 著/集英社
※感想文、書けていません……。
同著者の作品『奇病庭園』については、以下のエッセイで取り上げています👇
カフカ断片集:海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ(2024)
カフカ著/新潮社
カフカの言葉はTwitterに向いてそうだけど、カフカ自身はTwitterに向いてなさそう……。同じタイミングで『決定版カフカ短編集』も入手しまして、のんびり読んでいるところです。
黒の服飾史 新装版(2024)
徳井淑子著/河出書房新社
「黒」という色だけでこんなに深堀りした本が読めるだなんて! 私は服飾にも世界史にも明るくないのですが、読めば読むほど興味が湧いて面白くて一気に読みしました。
薄っすらと、西洋絵画の中では色がどのような意味を持つのか知っていることもありましたが、日常の洋服にもキリスト教由来の色彩倫理があるだとか(この辺りは聖職者の服装を想像すればわかりよいですね)、男性の服が黒になった根幹に女性蔑視の思想(夫の経済力に合った洋服を着ろ)や、西洋以外の地域に対する蔑視の視線(文明人は黒を着る、非文明人はカラフルな服を着る)があったとか、自分の中で結びつきもしなかったことがするする繋がっていく面白味を感じた本です。当然、そこにある蔑視思想は大嫌いですが……。
そうした話題をたくさん読んで行った先、現代にシャネルが登場した時は、「彼女の存在は長年続いた蔑視によって創造されて来た歴史の突破口だったんだな……」と清々しい気持ちにさえなりました。
あと、前々から心の中の積読にあったユイスマンスの『さかしま』が何度か話題に出て来たので、いよいよ読まなくちゃいけないな……と感じた次第です。(👇読みました)
約10冊だから14作品あってもいいよね! と開き直って選んだベスト本たち。どの本もとても好きですし、ここに挙げていない本も含め好きな本を見つけられるよい2024年上半期でした。
後半戦でも、自分にとって良い本との出会いがありますように。
【おまけ】2023年の約10冊記事はこちら
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