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大和
2022年4月19日 20:51
「お2人に会えで良かったッス!色々と話を聞いでくれで、ありがとうございました!!」エスカレーターで上がったホームの方から、聞いたことのある仙台訛り若い男性の声がする。その先には息子の「丸山聖也」と「和さんこと木下和宏」らしき男性が2人、新幹線の車両の中から手を振っている。「あら〜、このタイミングだったのね。ちょっとまずいから、あなたは向こう側から乗ってくれない。しばらく東京に居るんでし
2022年4月10日 16:47
「やあ、遅れてしまってすまないね」待ち合わせの時刻より、少し遅れてあの人は現れた。久しぶりに足を踏み入れたこの土地は、あの人にとっても嫌な思い出ばかりのように思う。それでも、この日にここを訪れることは、私たち2人にとって必要な時間であり、これからもこの鎖のような縁が切れることはないと思う。「ええ、いいの。あなたが遅れるのはいつもことだから」再会を喜ぶこともなく、私たちはタクシーに乗って
2022年4月3日 20:50
仙台駅午後8時20分東京行きの新幹線車内。「お、加藤君、一体どうしたんだい?」ベテラン刑事の和さんが、眉間に皺を寄せ、少しかすれた声でそう言った。話は数分前に遡る。新幹線を待つ仙台駅のホームにて、乗車しようと待っていた和さんと私の前に、母・丸山玲子からの差し入れを持って現れた仙台県警所属の加藤小次郎警部補は、巻き添えを喰ったような形で新幹線に乗車してしまった。「いや〜、丸山警部
2022年3月30日 22:06
午後8時20分の「やまびこ72号東京行き」を待つ仙台駅のホーム。「世の中には自分のことを知っている奴と、知らない奴がいる」ベテラン刑事の和さんが、少しかすれた声で、いつもよりも饒舌にそう言った。「自分の本音よりも目の前の見えることや他人の受け売りで幸せや不幸を判断するとはよくあることだ。俺は別にそれに文句があるってわけじゃない。ただ、世間の中の正しいという常識や思い込みが自分を動か