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【美の階梯‐低次と高次の美‐】プラトン『饗宴』を読んで

『饗宴』プラトン 2013.9.10発行 光文社古典新訳文庫

内容
 なぜ男は女を求め、女は男を求めるのか?愛の神エロスとは何なのか? 悲劇詩人アガトンの優勝を祝う飲み会に集まったソクラテスほか6人の才人たちが、即席でエロスを賛美する演説を披瀝しあう。プラトン哲学の神髄ともいうべきイデア論の思想が論じられる対話篇の最高傑作。

裏表紙より

プラトンの生涯

・前427年 政治的に有力な家系に生まれる。
(若年時代) 国政指導者を志すも、ソクラテスから吹かう影響を受ける。
・前399年 ソクラテスが処刑される。
(遍歴時代) 諸国を遍歴するとともに、対話篇の執筆を始める。
・前387年 南イタリアをおよびシケリアに旅行し、アルキュタス(ピタゴラス派)やディオンに出会う。同年、帰国後に、アカメディアを設立する。
(学頭時代) 中期対話篇の執筆を開始する。
・前367年 ディオンの要請によりシュラクウサイを訪問するが、同年に帰国する。この頃アリストテレス(384-322)がアカデメイアに入学する。
(晩年時代) 後期対話篇の執筆を開始する。
・前361 年 ディオンの要請によりシュラクウサイを再訪するが、翌年、かろうじて生きて帰国する。
・前347 年 プラトン没する。甥のスペウシッポスがアカデメイアを継承し、弟子のアリストテレスは学園を去る。

「対話形式」で繰り広げられる『饗宴』

 プラトンの著作はソクラテスを中心とする登場人物達の対話から物語的な仕方で構成されています。プラトン自身は基本的に対話篇に登場しません。

 以上の事実から、いわゆる「プラトンの哲学」の内容を把握しようとする上で、様々な問題やメリット・デメリットが考えられます。

 プラトン自身の考えが記されていないため、プラトンがどういうふうに考えていたかが正確にはわかりません。 

 ただこの書物は対話形式で書かれています。

 このことから読み取れるのは、プラトンは自身の考えを述べるよりかは、何か他の意図があってこの形式にしたと思います。

 その理由として、世の人たちにソクラテスを知ってほしかったのか、もしくは問を投げかけて疑問を持たせ考えるきっかけを与えたかったのか、はたまたプラトン自身がソクラテスはどんな人物だったのか、またソクラテスの考えを探求するために書いたのか。

 ただ一つ言えるのは、プラトンは対話を重視したかった。そして、もしかしたらプラトンは対話がしたかったのかもしれません。

 また、この書物は単に読むだけのものではなく、読者自らその作品の中に入り込んで、対話に参加して既成観念にとらわれないような、自身の思考の枠組みを広げる意図があるとも思いました。

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