オスカー・ワイルド『カンタヴィルの幽霊 / スフィンクス』を読んで
『カンタヴィルの幽霊 / スフィンクス』オスカー・ワイルド 2015.11.11 発行 光文社古典新訳文庫
個人的にオスカー・ワイルドは、童話のイメージが強くありましたが、本書で、新たなワイルド像を見ることができました。
「アーサー・サヴィル卿の犯罪」
主人公のアーサー・サヴィル卿が、ウィンダミア夫人の夜会に出席した際、手相術師ポジャーズから殺人の相が出ているという宣告を受けますが、それを回避せず、自ら進んで殺人を犯します。
ただ、最終的には誰も被害者になることはありません。成功したかに思われた殺人が、実は自然死であった、爆弾が効かなかったことで、彼の犯行は未遂に終わります。
しかし、手相術師ポジャーズの件は異なります。
主人公は、彼をテムズ川に放り込み、殺人を実行します。後日、新聞でポジャーズは自殺と報じられますが、あっけないほどあっさりと誰にも知られずに殺人が成功します。
主人公は、心に何かつっかえたような感じではありましたが、おそらく予言通りに殺人を犯さなければならないという強迫観念、もしくは義務感のようなものが押し付けられていたのかもしれません。
「カンタヴィルの幽霊」
アメリカ公使館に住む一家が、イギリスのカンタヴィル城を購入したところ、城に幽霊が出るという噂が広まり、幽霊とのやりとりを描いた作品。
幽霊は、アメリカ人一家を怖がらせようとあの手この手を講じますが、上手くいきません。
幽霊なのに体調を崩すというところは可笑しくコメディー要素がありました。幽霊が愛おしく思える内容でした。
「秘密のないスフィンクス」
語り手の私が友人ジェラルドと再会し、不安な途方にくれたような様子の彼から過去の話を聞くという形で話が進みます。
話自体は短いです。最後まで、謎に対する期待がありましたが、少し拍子抜けする結末でした。
「模範的億万長者」
結末は予想がつきますが、自然と口元に微笑みが浮かびます。
「スフィンクス」
詩で構成されており、理解するためには土台となる知識がいると思います。正直理解できないところが多く難しかったですが、古代の昔話のようなイメージが湧き上がりました。
他の作品、特にエイダの「回想」は読んでいて興味深かったです。
※エイダ・レヴァーソンは、ワイルドの親友で女流作家。彼女はワイルドから親しみを込めて「スフィンクス」と呼ばれていました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。