三崎律日『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』を読んで
『奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語』三崎律日 2019.8.23 発行 KADOKAWA
高校生の頃から、著者のニコニコ動画を拝見しており、本が出版されることを知って、手に取った一冊。
当時は正しいと認識されていたものが今から見ると受け入れられないことが時代を振り返ってみると多々あります。
時代によって価値観の変化をこの本を通じてみることができ、【当時】と【今】で評価が変わる点、悪書、良書、名著とも捉えることができ、登場してくる奇書はどれも興味深かったです。
『魔女に与える鉄槌』
10万人を焼き尽くした、魔女狩りについての大ベストセラーでは、その成立過程が面白かったです。
『台湾誌』
稀代のペテン師が妄想で書き上げた「嘘の国の歩き方」は、事象台湾人による台湾の歴史書で、すべて妄想の産物であることに驚き、この本の著者の往生際の悪さが印象に残りました。
『ヴォイニッチ手稿』
万能薬のレシピか? へんな植物図鑑か? 未だ判らない謎の書は、謎に挑んでいるときが一番楽しい時間で、解かれたものほどつまらないものだったりがよくあると思いました。
『野球と其害毒』
明治の偉人たちが吠える「最近の若者けしからん論」は、野球批判をしています。その中でも批判していた新聞が野球の大会を主催しているのは、なんともいえない気持ちです。
『穏健なる提案』
アイルランドの窮状を憂いた風刺論文で、かなり恐い内容になっています。それほど国の状況が危うかったのだと思いました。
『天体の回転について』
偉人たちの知のリレーが、地球を動かしたでは、「信じる」ことについて改めて考えさせられました。ストーリーとしてとても面白かったです。
『非現実の王国で』
「アウトサイダーアート」の代表格として位置づけられています。紛れもないアートで、凄みがあり、最後まで人に見せない姿勢はある意味感動しました。
『サンゴルスキーの「ルバイヤート」』
読めば酒に溺れたくなる、水難の書物では、詩がありますが、それ自体が美しかったです。
『椿井文書』
今も地域に根差す、江戸時代の偽歴史書では、「歴史」というものを書くこと自体、天才だと思いました。
『ビリティスの歌』
古代ギリシャ女流詩人が紡ぐ、赤裸々な愛の独白では、ビリティスという名の女性のエピソードがすべて創作されたものだとしても、詩、言葉がとても美しく感じました。
他にも、『フラーレンによる52Kでの超伝導』『軟膏を拭うスポンジ』『そのスポンジを絞り上げる』『月世界旅行』『物の本質について』が収録されていますが、どれも面白かったです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。