ばあばのシルバーカー選び
シルバーカーというのは足腰が弱い高齢者が買い物などに使う手押し車のことです。
ある朝、母が私にチラシを見せて「このお店に行ってみよや、母の日のプレゼント週間で、10%安くなるんじゃと」と熱心に伝えてきます。
「あんた、今日は大安じゃけん、今日がええわい」と行く気満々です。
母が出かける時の条件は「大安の日」である事なのです。
チラシの店がある場所は私たちの住んでいる地域から、公共の交通機関を使って約1時間くらいの場所です。決して近くはありません。しかし母は行きたいのです。
「お母さんはいっつも突然じゃけど、悩んどっても仕方がない、行くしかないか」と決心して、母の要望に従うことにしました。
介護用品の専門店のチラシには、様々な種類のシルバーカーが紹介されていました。母はそれが気になって、数日前のチラシを取って置いたようです。
杖を使っている母は、杖を頼りにすることでバランスが悪くなり、様々な所に負担がかかって疲れるので、歩く助けになるようにシルバーカーを買いたいと思ったようです。
頑固な母は、自分の心の内はあまり見せないタイプなので、弱音をはくことはありません。それなので本心が読みづらく、察するしかありませんが、自分が買いたいと思ったのは、きっとしんどかったからだと思います。
「私は気に入らんかったら買わんけんね」母は釘を刺しました。
母のことはよく分かっています。自分が納得しなければ誰に何を勧められてもうなずく人ではないのです。
バスと電車、タクシーを乗り継いで目的のお店に到着です。
店内に入るとすぐに、母は自分の要望にかなうシルバーカーを探していました。気になったものは実際に使って、進み具合や車体の重さなどを確かめます。
商品知識のある店員さんが何を勧めても、首を縦には振りません。
数点じっくり確かめてから、母の目が輝きました。
「これ、ええかも知れん、安定しとるしええと思う、知り合いの人が使いよったんよ」
「よしよし、これは気に入ったよう」
私は1時間かけて来た甲斐があったと思いました。
母はそのシルバーカーを購入し、買ったその日から、家の中で使っています。
「あんた、これで、ちいと楽に歩けらい、中に色々入れて移動できるし、ほんと買って良かったわい」と嬉しそうです。
母の要望通り、その日お店に足を運び、購入して良かったなと思いました。
母はシルバーカーを購入したことで大きな自信を得たようです。
「今度は、出掛ける時に使う安定感があって持ち運びに便利なキャリーバッグを見つけよや」と話しています。
自分に合った助けになるものが見つかるとお年寄りの日常はぐっと明るくなるものだと実感した出来事でした。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《これで楽になったわい》
「あんたお店に行くまでのルートは失敗じゃった、乗り継ぎが今一つじゃったけど、電車やバスの中から日頃見えんもんが見えて良かったんよ」
「お母さん気に入ったんがあって良かったねー」
「お店で他の人も見よったね、私も気に入ったんがあって本当によかったわい」
「お母さん、何処が気に入ったん」
「見栄えがええし、家においても邪魔にならんし、朝足が動きにくい時に楽じゃけんね」
シルバーカーの購入が母の元気にしたようです。家での母のいい相棒になりそうです。
夏めくや市内電車の小さき旅
ゴールデンウィーク、これまで旅を控えていた人も思い思いの場所にお出かけしていると思います。私たち親子は市内を走る路面電車や郊外電車に乗って小さな季節の旅を過ごしています。
乗客の人の姿や車窓の風景から季節の変化を感じる。それが母の大きな楽しみになっています。
周辺の花木の様子も少しづつ初夏の香りがしています。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗
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