ナイーブな少年
◇◇ショートショートストーリー
その少年の心はとても繊細です。ナイーブだから人の心を敏感に察知して相手の心に寄り添おうとするあまり彼の心は疲れてしまうのです。だから彼は普段あまり人と関わろうとはしません。適当な距離を置くのが楽なのです。
彼の楽しみはゲームです。バーチャルな世界の中で、自分の感情を爆発させることでナイーブがゆえに生まれる、ストレスを解消しているのです。ゲームをしている時の彼は別人のように生き生きとした表情をしています。
高校生の彼は誠実で、人を裏切らない性格です。学校にも休まず通い、友達だっていないわけではありません。ただ同世代の仲間とは人生で大切にしているもののプライオリティーが違うのです。
彼の価値観の根底には、人は平等であるべきだという精神が流れています。誰もが同じように幸せであるべきで、貧富の差や階級の差があってはいけないと思っているのです。彼は今の社会に対する不満が高まっていて、やるせない思いになっているのです。
この社会はおかしいけれど、自分の思う世の中に近づけるためには、自分は何をすればいいのか、いったい何が出来るのか、彼は常に葛藤していました。
彼には自分が進むべき道がいまだに見つかっていません。彼の苦悩は身近にいる家族でさえもはかれないのです。
僕の進む道はどこなのか、ゲームばかりしていても何も見つけられないのは分かっている、けれど矛盾したこの世の中で僕が満足を得るものもない、そんな思いを抱えて、悶々としていた彼に、影響を与えた人がいます。
高校の世界史の先生です。
その人は彼の言葉に耳を傾けてくれました。
「なるほど、君の考えは面白いと思うよ」
生徒の意見を決して自分と同じ方向に向けようとはしない先生です。
「君はそんな風に考えるんだね、それはそれで君の思考だから、そういう考え方も面白いと思う、考えることが素晴らしい」そう言われて少年は自分の考えに初めて自信が持てるようになりました。
「僕の考えている事を心の中にしまい込まないで、発信してもいいのかも知れない、皆と同じでなくても、僕は僕の思いを伝えてもいいんだ」少年はその先生に出会って、そう思えるようになりました。
それからです、その少年が将来の自分の姿を何となく想像できるようになってきたのは。自分の思いに寄り添ってくれる先生に出会った少年は将来、学者を目指そうと思い始めました。
「僕は、人を差別も区別もしない、誰もが幸せに平等に生きることができる社会を目指す人たちを応援するために、もっと学ぼう勉強しよう」そう思うようになったのです。
少年にとって、先生の一言が人生を大きく変えるきっかけになりました。
今、少年はゲームをする時間を惜しんで、未来の自分のためにたくさんの本を読みあさっています。
彼は自分の人生に目的を持つことができたのです。彼の目には力が宿っていました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《若者には未来があるけん頑張って欲しいわい》
季語辞典を一生懸命見ているばあばとの会話です。
「世界史の先生がおってよかったねー、人間の転機は何がきっかけになるか分からんけんねー」
「今の時代は、目的が見つからん子も多いと思うよ」
「今の混沌とした世の中でも、好きな道を追及したらええ、若者には未来があるんじゃけん、頑張って欲しいわい」
本当にそう思います。何か自分にとって興味が持てるものに出会えることは人生において本当に大切ですね。
【ばあばの俳句】
秋気澄む孫の成長たのもしき
明後日は、ばあばの孫の誕生日です。これから自分の人生を重ねていく高校生の孫への思いを詠みました。秋の気配を感じ始めるこの時期、読書好きの孫はきっと本を読んでいるはずだと思い描いたイラストです。
コロナ禍で孫とも長く会っていませんが誕生日を心から祝っています。そしてその成長をとてもとても楽しみにしています。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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私のアルバムの写真から
また明日お会いしましょう。💗