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恋にアンニョン

◇◇◇ショートショートストーリー

素足でゆっくりと白い砂浜に足跡を残しながら、ルリ子はターコイズブルーの美しい海をぼんやりと見ていました。韓国チェジュ島のヒョプチェ海岸は彼女には、よりメランコリックに映っています。

「本当だったら、達也と一緒に来るはずだったのに、一人ぼっちで見る海は寂しすぎるよ、回りはカップルばっかりだし」

チェジュ島は韓国ではハワイのようなリゾートアイランドでカップルや家族連れにぴったりの旅のスポットです。

付き合い始めた頃に、達也が雑誌を見ながら「ルリ子、ここ、いいと思わない、韓国のチェジュ島、火山の島だって、自然がダイナミックできれいだし、魅力的な場所がたくさんあって、俺が好きな韓国グルメもいっぱい食べられるしね」

「うん、行こう行こう、この石仏みたいなの可愛いね・・・」

「これね、島のあちこちにあるト・ル・ハ・ル・バ・ンって書いてるよ」


ルリ子は二人の会話を思い出していました。「達也が行きたいって誘っといて、予約した後でドタキャンなんて、あいつは最低だよ」彼女はため息をつきました。

クリスタルガラスのような透けた青い海で、物憂げに佇むルリ子は、その美しさも手伝って周囲の人の視線を集めていました。

パクさんとヒョプチェ海岸を訪れていた順も彼女の事が気になっています。

「パクさん、あの人ね、日本から飛行機が一緒だったんだけど、一人旅みたい、寂しそうだね、こんな素敵な場所に傷心旅行かな・・・」

「順、この島に来るのはカップルばかりじゃないよ、チェジュ島の自然に心を癒しに来る人もいるからね」

順は「なるほど」と頷いていました。


「順君、チェジュ島のタコ料理食べに行きましょう」

「タコ料理、あの活きてるやつ」
「違いますよ、ちょっと、辛いやつ」

「辛いの、いいじゃない」

そう話しながらも、順は海に佇むルリ子の横顔じっと見つめていました。「こんな素敵な所でもったいない」と、彼女のことがとても気になっていたのです。


二人がやってきたのは地元で知られたタコ料理のお店です。

女主が茹で上がったばかりの大きなタコをテーブルに運んで、彼らの目の前でハサミを使って食べやすい大きさに切ってくれます。ピンク色のタコからはまだ湯気が出ています。

「マシッケモゴジュセヨ」

「どうぞごゆっくりお召し上がり下さいってって言ってるんだよ」

「何となく分かるよね」と順。

注文したのは、茹でたタコをキムチの炒め物と合えて食べる韓国らしい辛さが際立つ料理です。

二人は顔を見合わせて「マシッソ」「おいしい」とうなずきながら食べています。ハアハア言いながらタコを噛みしめていると、そこに美しい女性が入ってきました、ルリ子でした。

彼女はメニューを選ぶのに悩んでいましたが、二人が食べている様子があまりにも美味しそうだったので、そのお皿を指差して「イゴ、これ、ジュセヨ」と言いました。

その声にすぐさま反応した順は「辛いけど、美味しいですよ、とっても」と辛さで汗びっしょりになった顔で美味しさを伝えています。ルリ子は軽く頷いていました。

パクさんが小声で「順さん、やりますね、軟派ですか・・・」と言うと、「旅人の親切ですよ、パクさん」と順が照れくさそうに答えています。

ルリ子はタコ料理を食べながら「達也、本当に辛いのが好きだったな・・・」とまた、彼のことを思い出していました。

彼女の虚ろげな表情に順は再び、釘づけになっていました。



順とパクさんの宿泊先はチェジュ島大きなリゾート施設にあるホテルです。久しぶりの再会だった二人は夜景が素敵なラウンジで、今日見たヒョプチェ海岸の海の色のようなエメラルドブルーのカクテルを飲んで盛り上がっていました。そこにまたルリ子が入ってきたのです。

パクさんが気をきかせて、彼女に声を掛けます。

「あっ、また会いましたね、タコ料理、美味しかったですか」

「ハイ、物凄く辛かったけど、マシッソでした、辛いので暫く汗が止まりませんでしたけど」

「ホント辛いよね、韓国料理の洗礼を受けたって感じだったでしょう」と順。

「お一人でしたら、ご一緒に一杯だけどうですか、御馳走しますよ」と誘うパクさんの人懐っこい笑顔に、ルリ子は気を緩めてごちそうになる事にしました。

一杯が二杯になり、三人は旅の解放感も手伝って、楽しい時間を過ごしました。

順は韓国に住んでいる友人のパクさんと合流して、念願のチェジュ島に来たことや、福祉関係の仕事をしていることなど自己紹介がてら一生懸命話していました。

ルリ子はフラワーアーティストをしていて、半年前から計画して恋人と旅をする予定だったのにドタキャンされて、悲しい一人旅になってしまい、ブルーな気分で旅をしていることまで話していました。


「初めて会った人たちなのに、いろんなことを話しすぎちゃったかな」と反省しながらも、傷心のルリ子の気持ちは少し晴れていました。

ルリ子は達也がチェジュ島旅行をドタキャンした理由に他の女性の存在を感じていました。最近の彼はルリ子に冷たくなっていたのです。
ルリ子はこの旅で、心のけじめをつけなければとも思っていました。


翌朝、世界遺産の城山日出峰ソンサンイルチュルボンを見に行こうとホテルを出ようとしたルリ子はまたまた順とパクさんに出会います。

「ルリ子さん、今日は何処にお出かけですか」とパクさんが訪ねます。

「今日は世界遺産を見に行こうと思って、お城みたいな山が海に映ってきれいなんでしょう、ソンサンイルチュルボンでしたっけ」

パクさんはにっこり笑って「それは素晴らしいですよ」その言葉が終わらないうちに順が「僕たちレンタカーで行くんだけど、一緒に行きますか、三人だと楽しいですよ」と提案しました。

ルリ子は一瞬考えましたが「そうですね、一人じゃ写真も上手く撮れないし、海沿いのおしゃれなカフェにも行きたい」

順は「僕たちもリゾートエリアにあるカフェをコースに入れてますから、三人だと思いっきり楽しめそうだ」と笑顔です。

パクさんが順に小声で言います。「順君、サランへシジャ、恋が始まる予感がするねー」

順は「えっ、恋の予感って、ほんとに」


三人は南国ムード一いっぱいの海岸線を走ります。

パクさんが「ルリ子さん、あの石で作ったおじさんの像あるでしょう、あれはトルハルバンと言って島の守り神なんですよ、いろんなところで見守っているんです」と教えてくれました。

「トルハルバン、石のおじさん、あっ雑誌で見てた石像だ、やっぱり可愛い」とルリ子。

順は、その道中、石のおじさんを見る度に、「石のおじさん、これまで何度も偶然に合っているルリ子さんと僕がいいお付き合いが出来るように見守って欲しいな」と密かにお願いしていました。

三人を乗せた車はチェジュ島のシンボリックな場所、城山日出峰ソンサンイルチュルボンに到着しました。

早速三人は記念写真を撮ります。順君は最高の笑顔です。きっと石のおじさんが恋の始まりを見守ってくれるだろうと信じているのです。


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【毎日がバトル:山田家の女たち】

《韓国語が時々入るんが面白いね》

夕食後に日記を書いているばあばと。

「あんた行ったことがあるけん、ショートショーに書いたんじゃろ、私も映像で見たことがあるけどチェジュ島ええとこじゃね、石のおじさんは知らんかったわい

「あの像は島のいろんなとこにあるしねー、あの形をしたカステラみたいなんもあるんよ」

「私は韓流見よろ、ほじゃけん韓国語が時々入るんが面白かったわい、ほじゃけどストーリーはようわからんよ」

母からダメ出しが出たようです。私としては旅心がモヤモヤしている時にリゾートの恋に思いを馳せていただけたら嬉しいなと思って書いたストーリーです。


ばあばの俳句3月21日A

【ばあばの俳句】


幸せの記憶あふれる冬の旅


母に旅の記憶を描いてと言うとこのイラストを持ってきてくれました。車窓に広がるのは旅の様々な記憶です。海、田園、そして夕日、冬の旅の記憶が蘇ったようで、楽しいイラストになりました。


幸せの記憶あふれる冬の旅C

旅の記憶をたどると幸せな気分になりますね。母にとっても、いい時間になったようです。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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写真2B

私のアルバムの中の写真から

やまだのよもだ10月1日B

また明日お会いしましょう。💗

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