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京の学び「生誕120年人間国宝の黒田辰秋を学ぶ」


京都の勉強をしているとたまに奇跡的な出会いをすることがあります。

最初の邂逅はテレビ番組でした。番組名は『京都浪漫 悠久の物語』で第162回のテーマは節分の京都。該当のシーンは300年前に創業したと伝わる鍵善良房さんです。

干菓子が登場して長野・小布施の落雁を思い出したり賞味期限10分の"くずきり"に驚いたり。その後映像は店内へ切り替わり、一際存在感を放つ木製の大飾棚が映し出されました。京都祇園出身の漆芸家で木工作家、木工芸の分野で初めての人間国宝に認定された黒田辰秋さんが制作したものなんだそうです。私はその名前を記憶しました。


二度目は一週間も経たないうちにやってきました。

京阪電車が発行している沿線情報誌『K PRESS』をなにげなく読んでいた時のことです。イベントインフォメーションになんと黒田辰秋さんの名前が書かれていました。京都国立近代美術館のイベント告知でした。



私はこの出会いを奇跡だと感じました。

今にして思えば、一つ目の出会いは裏側に番組制作側の意図があり私が勝手に奇跡と捉えていただけだったのでしょうね。本命は大飾棚だけれどメインテーマは節分なので黒田辰秋さんを前面に押し出すことができない。節分の和菓子紹介は撮影許諾の恩義のため。大人の事情だったのではないかと。穿った見方ですよね。ごめんなさい。そして三度目の出会いはNHK教育『日曜美術館』。黒田辰秋さんの特集があり2025年2月16日に放送されました。



昨年の一時期、私は京都に飽きていました。

大徳寺や東福寺の塔頭。何度日を改めても覚えることができなくて今でも庭と茶室の名が一致しません。勉強やめようと何度も思いました。他のことをして逃げたこともあります。しばらくしてnoteで新しい京都に触れる機会があり、楽しいと思えるようになってきたので勉強を再開しました。

京都の歴史や文化ってほんと奥深いですよね。一生をかけても知り尽くせないくらいたくさんの魅力に溢れています。黒田辰秋さんを知ったことで新しい魅力がまた一つ増えました。日本文化の最先端は現在東京が担っています。そこまで手を広げてしまうと頭がパンクするので大河ドラマ『べらぼう』とかは見ていません。知らない京都はまだまだたくさんあります。精一杯探求していきたいなって。

京都はわたしの推しであり人生の目標です。



追記

NHK教育『日曜美術館』「黒田辰秋 ものづくり問答 森と海と人をめぐって」観ました。

寡黙なクリエイターって今日日きょうび聞いたことがありません。今はどこでもだれでもいつでも何かを発信できる時代で知名度ビジネスが隆盛を極めています。言葉で表現しない芸術家は情報社会の中で生き抜くのはとても困難です。でもよくよく考えてみると伝統工芸に携わる職人さんの名を我々は知りません。国際舞台でも通用する芸術品を製作するのに一般人への知名度はそれほど必要とはしません。沈黙が美徳とはならないインターネット世界と大きく異なり、芸術は分かる人に伝われば寡黙でも通用する世界なんです。

今の人達って私を含めてSNSやメディアに影響を受けすぎているのかもしれません。世間の声を聞かなくても、世間に声を届けなくてもいい作品は作れます。独自性を生み出すためにあえて世間の目を気にしないほうがいい場合もあります。ただ自分の世界を広げていくのってとっても大変です。孤独は辛くて怖くて寂しくて心を弱らせてしまいますからね。多くを語らず自分と向き合い続けてきたことで黒田辰秋さんは木工芸で初の人間国宝に認められたのだ、と私にはそう感じました。

昨今の多様性ってなぜか人種と性別と性嗜好に限定されていますけれど、性格の多様性、職人気質の寡黙さにもっと注目してもいいんじゃないのかなって。多数に好かれなくたっていい。コミュニケーションが苦手でもいいじゃない。みんながみんな同じ方向を見なくてもいい世界を私は望みます。


「生誕120年人間国宝の黒田辰秋を学ぶ」了

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