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羽ばたき

黒歴史として封印したはずの自作詩集『地平の呼び声』から。


幼い頃いつも感じていたあの頭上の羽ばたき
あの頃の世界を統べるに相応しい
とんびの羽ばたきは
手の届かぬ空中に融け去ったのだろうか
それとも
今も優雅に私の内を滑空しているのだろうか

そうだ
私の手から肉を奪い取るのと引き換えに
彼はその存在を幼い人間に託したのだ
そうして内面世界を飛び回るとんびは
いつも私を見つめている
失われた没我的潜入を思い出させるかのように
そう
故郷はいつだって潜入する先の世界にある

それ故に
ふるえる軀を支えながら
尾根に立ち、蒼穹を見上げるとき
虚空からその羽ばたきは舞い降りて
私は一歩、踏み出したくなるのだ


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