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【詩】呆気ない


あゝ 呆気ない、
爛漫に咲いた栄華のあと、
散歩道に、くすんで渇く花、
踏みつけられた花弁、恋人たちの誓い、
夏の夜の虫たち、暗闇でざわざわと鳴る草木、
懸命に生きて燃え尽きる亡骸、
気が抜けるような、
すとんと落ちる段差のような、
今あるものが、
なくなる気だるさよ、疎ましさよ、
色鮮やかな血、噴き出して固まる、
死体の傷口は閉じる、
むかしの人は言う、それを無情と、
わが子が言う、枯れちゃったネエ、


あゝ 飽気ない、
何年生きても泉が湧く、あなたの肩をかすめて、散歩道に着地した花弁、種が風に舞って、
少しの間、空を飛んで、遠くへ、
頼りなく燃ゆるいのち、
静かに戻る握力のような、
邂逅、今ないものが、
再びあいまみえる美しさよ、
僕はこたえる、そうだネエ、
また咲くよ。必ず咲く。



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