【詩】スーパームーンが呼んでる
まんまるの月は
このせかいから脱出するための
ひみつのすり抜け穴
氷をくり抜いた
やさしい円環
泣きたくなるよ
仰ぎ見るそちらのせかいは
隣の芝生
食卓を囲む団欒の暖色
窓から漏れる
優しい灯り
みんな
閉じ込められてる
折り合いがつかない
差し出したものに
割が合わない
なにもかも
悟ったような顔して
ほんとうは
声が枯れるほど
涙を流したい
十月のよるは雲の影
高い空に漂う
澄んだよるの成分
炭の匂い
焦げた草木の匂い
スーパームーンが呼んでる
でも 届かないよ
背伸びして
手を伸ばす
掴めそうで
胸が苦しくなる
蜘蛛の糸が垂れ下がる
われ先に群がる
にんげんの欲が円環を壊す
そっと触るんだ
優しく扱うんだ
壊れてしまうから
出口を
見失ってはいけない
あの穴の座標を
見失ってはいけない
どんなせかいでも
望みだけは
捨てちゃいけない
いつか この渇望も忘れてしまう
あえてこちら側に残ったんだと
もっともな理由を
つくりだしてしまう
ふたつもみっつも
同時に違うせかいを
生きようとすれば
疲れてしまう
腕をできるだけ大きく振り
わたしがつくることのできる
最大の正円を描く
よるを破り 空間を切り出す
月が呼んでる方へ
踏み出す
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