見出し画像

There’s a certain slant of light, —斜光


There’s a certain slant of light,
Winter Afternoons —
That oppresses, like the Heft
Of Cathedral Tunes —

Heavenly Hurt, it gives us —
We can find no scar,
But internal difference,
Where the Meanings, are —

None may teach it — Any —
‘Tis the Seal Despair —
An imperial affliction
Sent us of the Air —

When it comes, the Landscape listens —
Shadows — hold their breath —
When it gose, ‘tis like the Distance
On the look of Death —


斜光
冬の午後——
大聖堂の調べのように重々しく

神々しい痛みを投げかける
傷痕はない
ただ内なる変容が
深い意味を宿して

誰も教えてはくれない
絶望の印
大いなる苦悩が
引き裂かれた空から

それがやってくる時
大地は音も立てず
影は息を殺す
それが去っていく時
それは死の相貌をなぜる時の
あの果てしのない距離のように


斜めに差す光の中を、人々が行き交う町の夕暮れ。
家路に着くスーツ姿の人、
親しげに談笑しながら酒場へ向かう若者、
自転車を漕ぎながら後ろにのせた子どもを振り返る人、
そんな人々の顔を沈みかけた陽が輝かせている。
人の営みに対して平等に注がれる温かい目のような、
その労をねぎらうように投げかけられる、
あの柔らかい夕暮れの光が好きだ。

だから、ディキンソンのこの詩を読んだ時はとても驚いた。
斜めに差す光を、こうも暗く、重々しいイメージで描く人がいるということに。

僕の見ているこの光も見る人によっては全くちがうイメージを抱かせるのか。

それとも、自分の住むこの町の、この人々が作り出す光景だからこそ、美しく見えていたということなのだろうか。

寒さの厳しい長い冬だというマサチューセッツ州アマスト。
ディキンソンの生きたその場所で見る午後の光はどんなものだろう。

いつかその光を訪ねて、旅をしてみたい。



『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICHINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?