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走馬灯のような夜だった。 まるで、走馬灯のような夜だった。 背の高い建物は何もないのに、…
雨粒が、やけに酷く音を立てて 窓硝子を何度も叩くので 重い脳を無理矢理持ち上げ 完全遮光の…
キンとした幻聴 無色の音 限りなく黒く 限りなく白い 午前四時半 朝刊配達のバイク いつもな…
その朝、窓辺に神は不在だった 神の不在によって、愛の存在が証明された 愛の存在によって、死…
人間が蝶を愛するのは、人間の、その頭蓋に1匹の蝶々を飼っているからである。 無論、全ての…
幾千幾万の嘘が、時間という骨組みの中で膨張して「世の中」とかいうものが出来上がっているわ…
確かに所有していた四肢が いつしか鉛にすり替わって 重く軋んで動かない。 脳から垂れた憂鬱の尾びれ、 目の覚めるようなどろどろの群青。 瞼の裏から呼気に逃げ込み きっと二度と出会えない。 昨夜芽吹いた眼球と、 一昨日羽化した心臓と、 ほんの少しの肉片を連れて、 コンクリートのヒビに隠れる。 ルージュと煙の乾いた匂いで 愛しい肺は干からびた。 時計の秒針歪んでいるから、 今以上を構築しても もうあの赤には会えないな。 #小説 #詩
真昼の空から砂漠の砂が 夜闇の木漏れ日抜けていく 空の一等端のあそこに 空いた無数のあの穴…
空になったコーヒーの缶に 捻じ込まれた吸い殻みたいなもんだよ。 ざらざらした匂い。 感情の…
梅が咲くから祖母の声 梅が咲いたら身が落ちる 卓上に在ったはずの鉛筆 行方不明で何も書けな…
何遍でも夢想する 幼少期、天井の木目を見過ぎたせいだ 樹木、花弁、猫、人間、虹彩 際限なく…
午前5:20、白くなった空と液晶の青い光が網膜を刺す。 途端、後頭部から背骨の途中までぱっく…
夢の終わりの冒頭で、まぶたを朝日に刺されたせいで、空蝉に、夢の澱が流れ込む。 21mgのター…
幼少の無邪気さを持って、道端の虫を捕まえる。 捕まえたのち、解体するバッタ、踏み潰す蟻、哀願するカマキリの目、既に死に絶えた蝶の羽を鱗粉ごと蹂躙し保有する。 優越、悦楽、背徳、小さな反抗。 鼻腔に仕舞い込む死臭。 来世は虫じゃないといいね、という、傲慢なる気の違った善意。 小さな命の羽音を生命体として認識できない分別のなさ。血肉の終わりも仕舞い込んだ死臭も、いずれ手前の腕に、足に、未熟な脳に、降りかかるものだと気付けない無知。無邪気さの罪悪。 己の首の締まる瞬間に認知す