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轢死の林檎

夢の終わりの冒頭で、まぶたを朝日に刺されたせいで、空蝉に、夢の澱が流れ込む。
21mgのタールのようにべたついたそれは
毛細血管の隅から隅へとじっとりと身を伸ばす。

知らない寂れた防波堤の上、夜光虫の群れる水面、揺らぐ度に何かを取り戻しかけ、掴みかけてはまた失う。

明るむ空の白が憎い、夕刻と橙と罵声が憎い。
偶像崇拝で救われた者は手を挙げおくれ。
そうして、お前の周りの大事な誰かの、大事な首を、こっそり締めた者も手を挙げてはくれないか。
鼻腔にこびりついたアルコール、頭のネジがずれていく、歯車が1つ足らないんだ。
誰か見つけてくれないか、あの子はこの目から逃げていく。

生者を縛る麻縄を、死者の名で縒る自称聖職者が笑う、やかましくって嫌になる。
壁の鴉も泣いてる、床のスズメも泣いてる、窓のヤモリも死んでいく。
二度と会えないのは誰だろう。

路上で見つけたガラス片、いつも通りの寂れた線路、錆のシミがこびりついたコンクリートは笑ってた。
7月頭、雨で冷え込む青い空気の中、湿ったアスファルトの上で、赤い林檎がポツンとあった。自動車のタイヤに轢き潰される度、林檎はきゃっきゃと笑い声を上げた。

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