足らない側
空になったコーヒーの缶に
捻じ込まれた吸い殻みたいなもんだよ。
ざらざらした匂い。
感情のシケモクにもう一回火をつけても
どうしようもなく喉が詰まるだけで、
同じ景色も、新しい何かもまるで見えないさ。
もう一本、新しいアレに火をつけようにも、
上手いこと着火出来そうもない。
ライターの石が飛んじゃったんだ。
ん?
アスファルトが波打つようになったのはいつからかって?
僕にはちょっとわからないけれど、
墓標の下の祖父と樹脂固めのカミキリムシ
箱の中のツバメガあたりが、
きっと知っていると思うよ。
丑三つ時には答えてくれるさ、もうちょっとだけ待ってなよ。
あ、電柱のてっぺんに君がいるね。
僕もそっちに降りようかしら。
電波塔じゃ高すぎて、全部が見えて嫌になる。
そういえば、昨日だったか
一昨日だったか半月ほど前だったか、
もっと前だったような気もするけど、
何の気なしに飲み込んだ錠剤が、まだ胃の中に居るんだよ。
もうずっと胃の中で、青緑に光っているから、そろそろ星になれそうなんだ。
だけれどもね、星になるには何かが足りないらしくて、神様の許可が下りないみたいなんだ。
悲しいよ。もう少しなのにね。
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