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特に理由はなかった。 これと言って何かあった訳でもなかった。 唯、街に数個しか無い高層ビ…
青々とした空、一輪の雲さえない青空。 その空の隅っこに、薄青色のリボンが結ばれている。 も…
合成されたチェリー味のキャンディで 舌が赤く染まってベタついている。 少し前から、鈍色の…
鈴蘭の街灯がぼんやりと、雨に濡れた寂れた街を、憐れむように照らしている。 通りには人影は…
冬が世界を白く凝固させている。 灰色に分厚く塗り固められた空に、刺すように吹く風も、靴底…
郊外にある大きなパラボラアンテナが、毎日、何かを受信する。 その度に、大きな曲線を描く、…
午前3時の月明かり。 満月の光は、昼間の太陽よりはるかに明るかった。視界の端に、極楽鳥の羽色を捉えながら、唯、私が私に課した今日中の業務を淡々とこなしていた。 卓上で感情の解体をする。 卓上で感情の解体を繰り返し、有りもしない正解を模索しては、不正解を、捨て去る作業。 生と死が対極にあると見るか、死は生の延長線上で起こるただ一つの出来事でしかないと見るか、を絶えず考えては、それをまた、ゴミ箱に投げ入れる。 紙とペンがあればいい、幻視と思想ともう会えないあの子達と、何もか
彼女は淡い紫色の、冷たい呼気を吐いていた。 僕はどっちつかずの、群青の、ぬるい呼気を細…
雨音はショパンの調べ、な、わけがないだろう。先ほどから降り出した雨はバラバラと乱暴な音…
ゆらゆらと空気が揺れるのを、唯見ている。 降る予定だった雨は今日一日一滴も降らずに、空気…
彼の目が綺麗だったので、私の人生の中の一晩をあげる事にした。 なし崩しでもなく、向こうか…