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走馬灯のような夜だった。 まるで、走馬灯のような夜だった。 背の高い建物は何もないのに、…
冬が世界を白く凝固させている。 灰色に分厚く塗り固められた空に、刺すように吹く風も、靴底…
彼が彼女を見ていた。 彼女は彼を見ていた。 彼は、彼の目から見た彼女が、確かにそこに在る…
あぁ、どうも。随分と久方ぶりだねえ、調子はどうだい?睡眠は?まぁまぁ、か、そうか。 眠る…
午前5:20、白くなった空と液晶の青い光が網膜を刺す。 途端、後頭部から背骨の途中までぱっく…
夢の終わりの冒頭で、まぶたを朝日に刺されたせいで、空蝉に、夢の澱が流れ込む。 21mgのター…
所詮世界なんぞというものは、各々の脳内で完結しているものなのだ。私自身の思う、万物の価値も、生死の概念、個体としての意識まで、結果のところ私の脳内にしか存在し得ないのである。 そうして、あれだよ。あれ。 君の思う青色は、私の見る青色と本当に同一であるか。光源から放たれた光が反射し、脳で見る色は、寸分の違いなく君と共有できているか。 各々の目が、脳が見る色は、実際のところ全くもってぐちゃぐちゃで、君思う青は、私の思う橙であったりはしないか。 それが人間が人間である故
割れた爪で文字を打つ。 爪に傷が生じていたのは、かなり前から気付いていたものの、直す道具…
ゆらゆらと空気が揺れるのを、唯見ている。 降る予定だった雨は今日一日一滴も降らずに、空気…
幼少の無邪気さを持って、道端の虫を捕まえる。 捕まえたのち、解体するバッタ、踏み潰す蟻、…
遮光カーテンを絶えず閉め切った部屋で、頭痛と共に起床する。 この所の余りに不安定な気候で…