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古くて新しいお寺の話。『薬師寺再興』寺沢龍


薬師寺は1300年の歴史を持つ古いお寺です。でも、長い歴史の中で、あたりまえですが創建当初の堂塔は、わずか「東塔」だけ。その他の建物は、天災や人災によって失われています。

1960年代半ば、薬師寺では創建当初の白鳳伽藍復興の運動を始めたそうです。牽引役になったのは、住職に就任したばかりの高田好胤と先代の住職橋本凝胤。そして、なんといっても大事なのは宮大工の西岡常一さん。この本は、薬師寺の白鳳伽藍再建を描いたノンフィクションで、人間ドラマです。

読んでいて、なんだかNHKの『プロジェクトX』みたいだなあと思って調べたら、この本の出版と同時期にNHKの『プロジェクトX』で薬師寺のことを取り上げていました。NHKの方は、こちらは西岡常一棟梁がメイン。普通の大工さんとは違う、宮大工さんの特別な技術が、伝統的なのに理にかなっているのがすごかったです。

私は、薬師寺はずっと今みたいにりっぱだったんだと思っていましたが、この本を読むと、今みたいにりっぱになったのは昭和の終わり頃で、戦前はボロボロだったということがわかります。私は仏教とかお寺の世界についてはよくわからないので、この本でお坊さんたちの世界がどんな感じなのかを知ることができて新鮮でした。

お寺と宮大工の関係、お寺を支える檀信徒さんたちとの関わり、奈良のお寺の話、仏塔や仏教についての基礎知識などなど。要所要所でわかりやすく書いてあるので、予備知識のない私にも入門編みたいで最適です。この本を読んだときの薬師寺の管長さんは、実は父の幼なじみの方でした。

そんなご縁もあって、薬師寺に祀られている玄奘三蔵の遺骨の話とか、そのお坊さんの書かれた本とかを読むついでに、この本も読んだというわけです。お寺にもお坊さんにも歴史あり。興味をもたれた方は、ぜひ5月5日に薬師寺にお参りしてみてください。おすすめです。


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