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パターンがわかると楽しくなる。『英語の思考法』井上逸兵
日本語も英語も、コミュニケーションには独特のお約束があります。井上先生によれば、ざっくり「個」、「つながり」、「対等」の3つに分けることができるとか。それを、みんながよく知るジブリの映画の英語翻訳なんかを使って、わかりやすく説明してくれます。サブタイトルの通り、話すためのレッスン。会話なので、例文も基本1行なのがうれしい。
「個」というのは、相手の意思を尊重して、そこには踏み込まない会話のこと。例えば、映画『千と千尋の神隠し』の中で、主人公の千尋が「私、釜爺のとこいかなきゃ」というのに対して、リンという女性のセリフ「いま釜爺のとこ行かねえほうがいいぞ」は、英語ではこんな風になるようです。
I wouldn't go right now
(私だったら今は[釜爺のところに]行かないなあ)
例えば、真冬にTシャツを来ている友人を見たら、日本語なら、つい「寒くないの?」と軽い気持ちで言ってしまいそうです。でも、英語ではNG。親しい友人だとしても、まるで相手が寒いかどうかの判断のつかない子どものような、おせっかいな言い方に聞こえるのだとか。
もし、なにかネガティブなことを言いたい場合は、I know you XXX but….みたいな婉曲なパターンを使うとか。相手の意思を尊重しつつ、「あなたのことをわかっているけれど、でも……」と言いたいことの前に、ワンクッション置くのがいいようです。
2番めの「つながり」というのは、フレンドリーさを出すこと。日本だと「いらっしゃいませ」とお客様を持ち上げますが、英語圏ではお店の店員さんが「Hi!」とか「How're you?」。お客さんも「Hi!」、「Good! How're you?」と返す。
「急いでね!」といいたい時にも「Please hurry」ではなく、「We need to hurry」(私たち、急がなきゃ)みたいに言う。Youだときつくなるので、Weにすると優しくていいようです。会話の途中で相槌をうつのも、相手とのつながりを示す重要なポイントだとか。
3番めの「対等」は、なるべく日本的な上下関係表現を避けること。何かおごってもらったときに、日本なら「先日はごちそうさまでした」は普通ですけど、英語圏では翌日以降まで引きずらないで、その場の感謝で終わりがベスト。プレゼントするときは「大したものじゃないですが」と謙遜せず、「I thought you might like it(あなたが気に入るんじゃないかと思って)」みたいな表現がポジティブでいい感じ。
もちろん、仕事なんかでは実際に「対等」ばかりじゃないけれど、会話するときの「対等」表現というタテマエが大事なのだそうです。事実と違っても、「つながり」を感じさせるような表現は、日本語の社交辞令でもありますよね。
前半は、この3つの事例をベースに、会話の日本語表現と英語表現の違いをたくさん教えてくれるので、なるほど納得。そして、後半の応用編では、日米の文化の違いからくる表現の差を教えてくれます。
例えば『となりのトトロ』の英語版で、入院中のお母さんをサツキとメイがお見舞いするシーン。日本語と全然違う会話になっているのがすごい!
母:ちょっと短すぎない?(Why don't you let me brush your hair?)
サツキ:私、このほうが好き。(I'm glad it's short.)
メイ:メイもメイも。(I want mine short too.)
サツキ:順番!(When you're my age.)
なぜかというと、母親がいくら娘でも「(髪の毛)ちょっと短すぎない?」は相手の領域に踏み込みすぎだから。自分がどんな髪型をするかは、個人の「独立」した好みなので、いい母のセリフとしてはNG。だから別の仲良いシーンに見える会話に変えられているらしいです。
そして、メイがお母さんに甘えて、自分の髪の毛を梳かして欲しがるセリフは、そのまま英語にすると、わがままな印象になってしまいます。メイをいい子に表現するために、「私もショートヘアにしたい」という元の日本語と違うセリフになっているのだとか。いろんな意味で驚きました。
ほかにも、例えばTVでよく見る外国人観光客への質問「なんで日本にきたのですか?」も、直訳してしまうと「Why did you come to Japan?」=「なぜ日本に来たのですか?(来なくていいのに)」なニュアンスになりがちとか。だから、英語では「What brings you to Japan?」(直訳:何があなたを日本に連れてきたのですか?)がいいらしいです。
こういう、シンプルだけど重要な表現の違いは、文化の違いを知らないとうっかり誤解を生みそうです。1つ1つ覚えるのは大変だけど、相手の意思を尊重してそれに踏み込まないとか、フレンドリー大事で、上下関係で言葉を考えないとか、基本を抑えておくなら、いろいろ応用できそうです。