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こんな高校生活にあこがれました。『恋する女たち』氷室冴子


主人公の吉岡多佳子には、2人の変な友人がいます。
美人なくせに、何かというとすぐ自分の葬式を出す癖のある緑子。学年トップの秀才でスポーツ万能で、しかも何を考えているかわからない汀子。多佳子は、自分はいたって普通の高校生だと考えているけれど、ちょっとそれは違うみたい。そんな3人の青春……(?)物語。

本書に登場する3人の女子高生たちは、みんなそれぞれ個性的で、ちょっとシニカルな視点を持っています。学校生活に埋没することには意味がないと知っているけれど、女子高生は「女子高生っぽくあること」を社会的に求められていると理解しているというか。

3人は、年齢相応な部分と、年齢よりちょっと賢い部分を持っています。それは、高校時代にありがちな、背伸びや自意識過剰も含まれていて、とても共感できました。何より、その背伸びがかっこよかった。

私が経験した中学から高校までの女の子の世界は、必ずペアかグループで行動するのが自然で、休み時間のトイレから、お弁当まで一緒でないと、生活しにくい部分がありました。今は、どうかしりませんが。なので、そういう面倒くさい女の子特有の友達づきあいをせずに、でも、ちゃんと親友している彼女たちが、私にはたまらなくうらやましくてたまらなかったんです。

いつの間にか、視線の先に入ってくる男の子。
何かドラマチックな事件があったわけでもない。
でも、気がつくと視線は彼をとらえている。
彼は一体何者だろう。
なぜ、私は彼を見つけてしまうのだろう。
どうして、他の人じゃだめなんだろう。

そして、あの青臭い時代にだけに経験できる、甘酸っぱい恋心。不安定な気持ちをもてあまして、自分のロンリと無意味に闘いつつ、何とか恋する気持ちを自覚した頃には、失恋してしまう不器用さ。ベタベタ慰め合ったりしないけど、精神的には団結して(?)傷心を乗り越える女たちの、ささやかながらも華やかな宴。

友達に勧めると、反応が極端に分かれる作品だけれど、あとがきも含めて、私には忘れられない1冊です。今では、娘も「この本好き」と言ってくれるようになったのが、うれしいです。



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