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たくましい女の子の物語。『毒見師イレーナ』マリア・V ・スナイダー

猛烈にライトな小説が読みたくて、あちこちおすすめを探していたときにたどり着いた本。原題は“Poison Study”。英語版と日本語版の表紙が違いすぎて、何の物語か、予想がつきませんでした。

内容も、最初は中世的小説というか、ミステリーのような謎だらけで、しかもかなりハードな展開。毒見師というのは、『蟲愛づる姫君』シリーズ蟲師なものではなく、国の最高司令官の毒見役のことです。

しかも、単純に毒見するだけではなく、自分が味見して飲まされた毒を、瞬時に判断して死ぬ前に毒の名前を伝えるのが仕事。万が一、政府の指導者も毒をもられた場合、いち早く要人の解毒対応をして命を助けるために。

どう考えても割に合わない毒見師ですが、なぜ、若い娘のイレーナがこんな仕事をしないといけなかったかというと、死刑囚だったからで、死刑を免れるためにはこの仕事をしなければならなかったというわけです。

なので、読み始めは期待と違いすぎるハードモードに挫折しそうになりましたが、周り中敵だらけの中で、彼女が知恵をしぼって努力して、少しづつ能力を高めていくあたりから、ストーリーがおもしろくなってきて、そこからは、もう一気読み。

アクションあり、魔法もありのファンタジーですが、ミステリー要素もあって、どんでん返しもあります。主人公がどん底から、自分の知恵と努力で這い上がり、仲間を見つけて生き残っていく術を身につけていくのは物語の王道ですが、だからこそ読んでいてとても心地がよかったです。

このイレーナの物語は私が読んだ当時は三部作で、翻訳も出たばかりだった気がします。第二部から第三部にかけては、毒に関する話はほぼなくなって、イレーナの生まれの特殊性とか、魔術とか、ベタな恋愛要素とか、そういう普通のラノベ的要素が強くなっていきます。私は、そのあたりがちょっと残念でした。

でも、中学生だった娘はかなり気に入って三部作全部読んだので、このあたりは個人の好みで満足度が違うのだと思います。そして、人気シリーズになったので、その後も続編が出たようです。興味をもった方は、ぜひ試してみてください。


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