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青春時代の思い出の作品。『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子

とあるウェブメディアで、コバルト文庫の80年代投票やっているようです。私の場合、氷室冴子さん一色だったので、氷室作品全押し以外の選択肢がありません。

ただ、未完で電子化されていなくて、私の中で今のベストの『銀の海 金の大地』は1992年が初版なんですね。せっかくの機会なので、1980年代の氷室作品を連続して思い出してみたいと思います。

『なんて素敵にジャパネスク』は、高校時代、暗記するほど読みました。新刊の発売日には、同じファンの友達と昼休みに高校を抜け出して、本屋まで買いに走りましたっけ。

大学生になり、社会人になり、何度も引っ越する中で手放してしまいましたが、娘に読ませたくて、再入手したら、表紙が現代的に変わっていてびっくり。でも、今どきの娘には、表紙のイラストが重要なことはよくわかっていたので、イラスト変更全然オッケーです。

あらすじは、右大臣家の長女瑠璃姫はお年頃。でも、当時(平安時代)の一夫多妻の結婚に希望が持てなくて、お見合いを断り続けていましたが、ある晩父親に無理やり結婚させられそうになって(当時は通い婚の既成事実が先)、助けてくれた幼なじみの高彬といい雰囲気になります。
その後、高彬との結婚を首尾よくすすめるため、がんばろうとする瑠璃姫。ところが、瑠璃姫が当時の常識を越えて(家を出て)活躍してしまったために、宮中を騒がす事件に巻き込まれていきます。

この作品は、氷室さんがお母様に「結婚しろ!」と迫られていた時代に書かれた、というのはファンがみんな知っている話だと思いますが、新版の氷室さんのあとがきを読むと、「その頃から10年以上たった今では、別の(瑠璃姫の)物語もあったなあ」と書かれています。例えば、主人公は女房でいろんな殿方と知り合うけど、最後の肝心なところで駄目になる話や、結婚してから愛が芽生える話・・・云々。

1ファンとしては、歳を素敵に重ねられた氷室さんに書いて欲しかった幻の物語ですね。でも、やっぱり氷室さんの小説の主人公は、そういうしっとり路線では、上手く成立しない気がするのは『月の輝く夜に』を読んだ後だからでしょうか。

余談ですが、小学校だった娘が「ジャパネスクってどういう意味?」と聞くので、電子辞書を引かせたら、ジャパネスク=日本的は理解したようです。そして、『なんて素敵にジャパネスク』の物語は、「瑠璃姫が日本的伝統的な社会ではっちゃける」話の意味で納得したらしく、かなり気に入った娘は、1日で読み終えた後、夏休みの読書感想文はこれで書くとがんばっていました。どんな内容になったのか、今から思えば確認しておけばよかったです。

私の年齢の人間にすれば、氷室さんはそれまで誰もやらなかった、平安時代なんて難しい物語の舞台で、若い子が読みやすい少女小説を書くという、アクロバットを実現させた功労者。あの夢枕獏さんも、確かどこかで「氷室さんがいろいろ平安時代を書いて、大ヒットしてくれたおかげで、後の僕たちが『陰陽師』で平安時代を舞台にしやすくなった」みたいなことを書かれていましたっけ。

最近は、大人向けに復刻版もあるんですね。どんな人があとがきとか書かれているのか、氷室冴子さんの未読の文章もあるのか。ちょっと気になります。





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