彼女の言葉はいつも元気をくれる。『アナキズム・イン・ザ・UK 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』ブレイディみかこ
映画監督として有名なケン・ローチ、ハリーポッターの作者として成功したローリング。そして、私が知っているのはMr.ビーンの人や、映画監督のダニー・ボイル。それだけではなく、イギリスの著名人の「レフト」な発言や活動をゴシップ混じりでおもしろおかしく紹介した本がこれ。
日本では、タレントや著名人が政治活動をすると眉をしかめる人たちが多いけれど、イギリスは常に自分を主張し、政治的にどこかを支持する。支持するところがなければ政党を立ち上げる。アメリカみたいに二大政党どっちにも寄付して保身……って人は、ここには出てこない。
パパラッチもバッシングもひどいけれど、それでも人々が政治的な主張を自由にして、それを批判したり支持する人がいるというのは、なんだかとてもうらやましい。空気ではなく、言葉が自分たちの社会を決めていく、それだけでも得難い状況だと思う。
著者のブログもそうだけれど、名言の宝庫。
誰もが度肝を抜かれるほど先鋭的なものを創造する鍵は、誰もが度外視している古臭いものの中に隠れていたりする。というのは、例えば音楽の世界では常識だ。政治の世界でも、そんなことが起こる時代に差し掛かっているとすれば、わたしたちは面白い時代に生きているのかもしれない。
「左翼は何でもかんでも公平に分け合えばいいと思っている平等バカ」という人がよくいる。しかし、貧民街のおっさんやおばはんをあんな顔で笑わせることや音楽の楽しさを分け合うことがバカなら、世の中はもっと積極的にバカになったほうがいい。
世の中はフェアではないし、リアリスティックに言えば人間は平等にはなり得ない。しかし、なぜにそういう蜃気楼のようなコンセプトを人が追うのかと言えば、それは人が金や飯と言った目に見えるものだけのために生き始めるとろくなことにならないからだ。たとえ無理でもメタフィジカルなものを志向する姿勢だけは取っていかないと、人間は狂う。
こんな文章をかけるようになりたい。
彼女に比べたら、人生の経験値はかなり低い私だけれど。