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宗教であり、数学であり、哲学でもあった。『西洋音楽史』岡田暁生
こちらのサイトの書評がとってもおもしろかったのでAmazonで探したら品切れ。その後、ずーーっと品切れ。ようやく先日入手したら、なんと半年で5刷でした。ひええ...
読後の感想もとても満足。私みたいな音楽素人でも、知的興奮が味わえました。こういう芸術系には縁のない夫にも、胸張って勧められる程。案の定、夫もかなり熱心に読んでいました。読んでいるとフランス、イタリア、ドイツを旅行したくなります。この本がそのままガイドブックになるというのもむべなるかな。すごいなあ、新書サイズでこんなすごいものが書けるなんて。
古代の音楽は数学で、中世では科学や哲学でした。
教会で作曲された音楽がなぜ皆3拍子かというと、「三位一体」の3だから。14世紀になって2拍子の音楽が作られると教会から「神への冒涜」として訴えられた……豆知識もおもしろい。
ロマン派の時代は、社会的政治的経済的に全然ロマンチックじゃない、悲惨な時代という指摘。そういえば中国の清朝末期だったか民国初期だったか、農民・宗教反乱と革命・動乱の時代には、文学史で言うところの革命的啓蒙的な小説でなく、いつにもまして美女と美男が恋愛を繰り広げる三文小説が売れたって読んだ記憶がある。
最初の部分から「ひえぇ」「おぉ」と叫びたくなるような豊富内容は、音楽の流れをたどりつつ、社会・政治・文化・思想までさりげなく着実に織り込んでいて、絵や写真もたくさんあって、本当に読んで楽しい「西洋音楽史」。この地味なタイトルと中身のギャップがなんともいえない。
私が大昔、学校で習った音楽史って、これとはかなり違う。こんなおもしろい本が売れまくって、音楽好きがみんな買って、先生たちも読んだりしたら、授業の内容も変わりそう。