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原案だけど、原作ではない。『ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち』マーゴット・リー・シェタリー
映画がすごくおもしろかった『ドリーム』。原作をわりと改変して、だいぶエンタメに作られているらしいと噂を聞いたので、原作を読んでみました。値段からいってソフトカバーかと思っていたら、文庫でびっくり。
戦争と冷戦を背景に、男女平等や黒人差別の撤廃が進んでいくアメリカ。もちろん、黒人たちの努力もすごいけれど、やはり時代的な動きというのはあるなあと。日本の場合『風立ちぬ』は男たちしか出てこなかったけど、この作品で女性たちが担っていた役割はどうしていたんだろうとか、日本が目指していたドイツはどうだったんだろう? などなど、いろいろ気になります。
というか、映画は舞台が1960年代だけだけど、原作は1940年代から始まって、60年代まで続く。だから、第二次世界大戦時代が含まれる。冷戦時期ってことにするとわかりやすくソ連vsアメリカで宇宙開発をめぐる「きれいな闘い」っぽいストーリーにまとめられるけど、第二次世界大戦時期って「科学者としての戦争への加担」という微妙な内容も含まれます。
そういうわけで、原作というより、かなり原案に近くて、しかもわかりやすくステレオタイプにアレンジした映画でした。『ドリーム』って。どこがどう違うのかは、こちらの記事がとても詳しいです。
あとは、映画では描ききれない、才能あふれる女性たちのたくましくて魅力的な姿はやっぱり原作の見どころ。それから、博士号を持っていても、子供のためにホテルやクリーニングで働いたドロシーの黒人としての報われなさとか。キャサリンは映画よりも、かなり結構早い時期から認められていたとか。
映画は映画。原作は原作で全然違うので、両方楽しめたら2倍おいしいです。原作の主役はドロシー。母は強い。そして、読んでいると自分もがんばらないと! と思えてくるのでオススメです。