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まさか番外編があるなんて!『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』氷室冴子


数年に1度、氷室冴子さんの作品に浸りたい時期がやってきます。そんなとき、ついでにネットで氷室さんの情報を集めて、没後の再販とか新しい関連本もチェックします。

もちろん、亡くなってから10年以上たつので、新刊が出るわけではありません。でも、私が知らない短編とか、これまで単行本に収録されていなかった番外編なんかを、たまに見つけたりします。それはつまり、私が読んだことのない「新刊」みたいなもの。発見したときのうれしさは、ひとしおです。

学生時代は『なんて素敵にジャパネスク』が大好きでしたが、大人になると『ざ・ちぇんじ』のほうを読み返したくなります。古典の授業にも出てくる『とりかへばや』。双子の男女がお互いに女装、男装して生活して平穏に暮らしていたのに、帝の出来心で二人が宮廷に出仕することになったから、さあ大変!

あの懐かしい京都なまりも、程よい原作の改編も、今、読んでもすごく自然です。さすがの名作がめでたく再刊され、電子書籍化もされた『ざ・ちぇんじ』ですが、これに「月の輝く夜に」という大人向けの平安の物語、そして過去の名作の番外編も収録されていました。

まずは、『クララ白書』『アグネス白書』の番外編、「お姉さまたちの日々」。虹子さんは相変わらずですけど、高城さんにあんな器用なことができるなんて!というのが一読した感想です。高城さんが色仕掛けで男を転がせるなら、本編でしーのを無理やり恋人に仕立てる必要もなかったんじゃないの? とも思いますが、でもまあ、しーの相手に演技できるくらいだから、なんとかそれぐらいはできていたのかな? 白路さんの化けの皮が・・・いやまあ、『クララ白書』でも結構剥がれてましたね。この方は。

次に未読の「月の輝く夜に」。読み終わった直後の感想は、氷室さん、作り込み過ぎじゃないのかな?でした。というのも、男性主人公(?)の有実が政治面で完璧すぎるんで、なんで世慣れない貴志子に嫉妬するほど惚れてしまったのかがよくわからなかったです。

娘ほどの年齢の若い女を妻にできて、それだけでうれしい単純な男にも思える要素がなくて。もちろん政治は有能だけど、男としては凡庸って人もいるでしょうけれど。貴志子の若いけれど容姿は並々。両親がいないので、政治的経済的バックがあるわけでもなし。他に好きな男がいるから、自分に感心が薄い女に、それでもここまで執着するものなのかなと疑問を感じてしまいました。

氷室さん、女の子の物語はものすごく上手くて、そこに出てくる大人もリアリティがあるのですが、大人だけが出てくる物語はちょっとイマイチな感じがします。不思議ですね。

さて、ティーンエイジャーの頃、あまり好きではなかった『少女小説家は死なない』。小説家とか編集者とか、出版社の世界を知らなかったからだと思います。でも、この本に収録されている続編「少女小説家を殺せ!」は、今回、一番おもしろかったというか、本編との違和感が全然なかったので、逆にそれがうれしかったかも。

久しぶりに読んだ『ざ・ちぇんじ』。やっぱりおもしろかったです。ハードカバー化されたものもありますが、娘には新しい挿絵の文庫本の方が喜ばれそうかな?『ざ・ちぇんじ』もコミカライズされていたんですね。知りませんでした。

 



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