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明治政府のサプライズ人事。『お殿様、外交官になる』熊田忠雄


明治維新によって、近代国家への歩みを始めた日本。ヨーロッパやアメリカに追いつくために、新政府はいろんな官僚を視察や留学に派遣しました。多分、新政府のいろんな官庁の中で、一番海外情報が必要なのは外務省。多くの外交官が海外に派遣されました。

どんな人が明治の外交官になったのか。明治維新というと、江戸時代から一気に新しくなったというイメージがありますが、実は旧大名とか旧公家、旧幕臣の人たちが結構いて、目端のきいた彼らの中には若い頃に息子たちを海外留学させて、その後の就活に備えたとか。

本書は、そんな「外部からの飛び入り組」だった外交官7人について、読みやすくまとめた本です。とりあげるのは、旧藩主では肥前佐賀藩の最後の藩主鍋島直大、安芸広島藩の浅野長勲、美濃大垣藩の戸田氏共、阿波徳島藩の蜂須賀茂韶、和泉岸和田藩の岡部長職。公家家族では柳原前光。そして、「賊軍」からは、駐露公使は榎本武揚。

私は、岸和田出身の岡部長職の息子長景について知りたくて、本書を手に取りました。残念ながら、息子についての言及はありませんでしたが、そのかわり、岸和田藩と篠山藩との親戚関係を知ることができたので、いい情報をもらえた感じです。

歴史について教科書や本でしか知ることのできない現代の私たちは、江戸時代から明治維新に劇的な変化があって、すっかり変わったというイメージを持ってしまいがちですが、専門の本とか郷土史の本や新聞を読んでいると、なんだかんだいって、江戸時代の村の人間関係とか、藩主と藩士の関係とか、藩主たちの婚姻関係とか、第二次世界大戦の終わった後まで続いていることが結構あることがわかります。

だいたい親子三代までの関係は、それなりに続くということでしょうか。劇的に変わったようで、実はなかなか変わらない社会。そういう話は、読んでいておもしろいです。元新聞記者さんらしく、ちゃんと参考文献リストもあるのもいいですね。


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