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ヨックモックのコピーがライターの初心を思い出させてくれた話

株式会社エクシングのコピーディレクター、高沼です。

みなさん、お菓子は好きですか?

私はどちらかと言うとしょっぱい系の方が好きなのですが、それでも大好きなお菓子はたくさんあります。

その一つが、シガール!

50年以上の歴史を誇るお菓子ブランド「ヨックモック」の定番商品です。



独特な模様があしらわれたこの缶を目にするだけで、「あ!ヨックモック!」と思わず声をあげてしまいます。
(名前を知らなくても、缶を見てピンとくる方もいるかも…?)

今回はそんなシガールを購入する際に出合った素敵なコピーと、ライターとして感じたことを書きたいと思います。




ファン垂涎のノベルティ “シガールのバッチ”


ある日、X(旧Twitter)を見ていたところ、こんな投稿を目にしました。



なんと、限定ノベルティとしてシガールのマグネットバッチがつく…!?

ファンとして、これは見逃せません。
すぐさまオンラインショップにアクセスし、商品をカートに入れました。


スーパーマーケットにあるようなショッピングカートのミニチュア写真
こういうときだけは素早い私。
我ながら感動をおぼえます。



買いたい私 VS 頭の中の天使


商品をカートに入れ、意気揚々と購入画面へ進もうとしたところでした。

心の中の天使が急に囁きはじめます。

👼「あなた、今月は結構浪費しているけれど大丈夫…?」


「いらすとや」の天使のイラスト。白い服、白い羽、金色の輪を身につけてニコニコとこちらを見ている。
ごくたまに現れる、衝動買いを阻む天使。


た、たしかに…。

バッチは喉から手が出るほどほしいけれど、夫と二人で食べるには持て余す量のクッキーかも…。

迷うこと数分。泣く泣くカートから商品を「削除」するボタンを押しました。

が、その直後、思わず手を止めることに。

その理由が、こちらの画面。




ヨックモックのオンラインショップの画面。ショッピングカートから削除するボタンを押したところ、「食べる人の喜ぶ顔を想像して、こころを込めて作ったお菓子を是非ご賞味ください。削除させていただいてもよろしいですか?」というメッセージが画面中央に表示された。
ヨックモック オンラインショップの画面。


な、なんて心のこもったメッセージなのだろう…!

スマホを持つ指先が、じんわりとあたたかくなったような気がしました。



オンラインの手軽さか? 実店舗のぬくもりか?


言わずもがな、オンラインショッピングは便利です。
指先ひとつで、夜中であろうがベッドの中であろうが購入できます。
コミュニケーションにまつわる負荷も少ないので、私自身も頻繁に利用します。

そのぶん、実店舗での購入体験とはやはり異なります。
ストレスが少ない反面、思いがけない嬉しい出来事も起こりづらい。
店員さんとのやり取りも含めて思い出に残るような経験は、基本的に得られません。

けれど、カートに表示されたこのメッセージは実店舗での体験に近いあたたかみを与えてくれました。
自宅にいながら、つくり手のぬくもりやこだわりにふれられたのです。


マグカップから湯気が出ている、あたたかみを感じる画像
思いがけず目にしたメッセージに、心がほわっとあたたかくなりました。
Photo by Ioann-Mark Kuznietsov


「自分ゴト化」するコピーの力


でも、なぜこのような気持ちになったのか?
名コピーライター・谷山雅計さんからの教えである「なんかいいよね禁止」に基づき、私なりに紐解きたいと思います。

私が購入しようとしたのはオンラインですから、店員さんはもちろん目の前にいません。
ストレスがない一方で、淡々と購入へ進みます。

けれど、あのメッセージを見た瞬間、心の体温がグッと上がりました。


食べる人の喜ぶ顔を想像して、
こころを込めて作ったお菓子を是非ご賞味ください。


お菓子に向き合うつくり手の姿を思い浮かべると同時に、店員さんに目を見て「本当によろしいですか?」と言われた気分になったのです。

つまり、“オンラインショップ”と“消費者”というぼんやりとした枠組みを超え、“つくり手”と“私”という1対1の関係性が構築された。

いわば、「私だけに語りかけている」ように実感させられたワケです。(俗に言う「自分ゴト化」ですね)

Webのマイクロコピーとしてはやや長く、エモーショナルな表現かもしれません。
ですが、50年以上にわたってお菓子をつくり続けてきたヨックモックだからこそ発信できることばだと感じました。

…というわけで、このコピーにグッときた私は、商品を「削除」するのはやめることに。

購入画面へ進み、限定バッチもお菓子もしっかりゲットしました!
(お金のことは忘れることに。い、一旦ね…)


ヨックモックの大きな四角い缶とシガールの小さなバッチが映った写真。缶は淡い緑色で、ところどころにキンモクセイの花の絵柄が描かれている。
後日届いた商品とノベルティのバッチ。
日比谷花壇とコラボしたキンモクセイ柄の缶もかわいい…!





まとめ − ことばは、たしかに背中を押す


「コピーライター」と書かれた名刺を手にしてから、約10年。

お仕事を続けてきたことで、「正解」へ最短距離で辿り着こうとする思考回路が徐々にできたように感じます。

ポジティブに捉えるなら、経験が蓄積された証でもあるでしょう。
この業界、かつ当社のような決して大きくない規模の会社では、短期間で成果を求められることが多々あります。
こうした環境では、「正解」を早く導き出すことが必要とされますし、スピード感を持たなければ仕事として成り立たない面もあります。

一方で、それはある意味「無難」というか、悪く言えばスムーズに仕事を進めるための「正解」を出すクセにつながりやすい。

つまり、本当にそれが「最善か?」という深い問いには背を向けてしまっているのです。

本来、コピーは「正解」を出すというよりは「こんな手があったか!」という発見や新たな価値をもたらすべきです。

絶対にそれ以外の道はないか?
本当にそのことばでひとの心を動かせるか?

こうした想いで、どんなにささいなコピーにもこだわらなければいけない。
いち消費者として心を動かされたことで、あらためて身が引き締まりました。

つくり手として大切なことを思い出させてくれたヨックモックに、お礼を言いたいです。
いつも美味しいお菓子を、そして素敵な体験をありがとうございます!


叩き起こされた初心とシガールのバッチを胸に、今日もがんばります!



ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

【コピーってどう書くの?と気になった方へ】
▼ ただの大学生が、養成講座に通ってみたよ!という体験談。


【文章をもっと上手く書きたい!という方へ】
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