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掌編小説

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わたしの掌におさまる文章を置いています。
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#掌編小説

Senseless adolescence

Senseless adolescence

 代わり映えのしない毎日が過ぎたとしても。
 犯した罪の心当たりがあり過ぎたとしても。
 最後の砂が落ちる瞬間を見過ごしたとしても。

「無声映画を見ているようなもの」

 なにも嘆くことはないと、あの人は夕暮れを眺めていた。
 校舎裏の用具倉庫の上で、スカートの中に緑のジャージを履いて。
 未使用のピアッサーを小さな手でもてあそびながら。
 脱げかけのローファーを爪先にひっかけていた。

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Library on a rainy day

Library on a rainy day

 雨の日の図書館ってのも嫌いじゃない。小洒落たショートケーキみたいな直方体の建物の中に、何十万冊の本が眠っている。本ってのは数百枚の紙からできていて、紙は空気中の水分を吸う。森林と同じで、呼吸をする。雨の日の図書館は、だから、音もなく外の雨を吸い込む。そして晴れの日に溜めこんだ湿度を解放する。そういう、無機質な生命体。その体内に、俺は今から入っていく。傘を閉じて、ジーパンの裾を軽くはたいて、靴底の

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Reminiscence before dawn

Reminiscence before dawn

 熱くて、寝苦しい夜だった。
 痛みをともなう喉の渇きで目が覚めた。

 さっきまでの僕はオンラインゲームの、空を自由に飛べる騎士で、白銀の鎧を身にまとい、陽炎のゆらめく東京の、高層ビルの屋上の縁に腰かけて、あざやかな青で塗られた夏の空を見上げていた。

 僕は一人ではなかった。同じビルの縁に佇むひとがいた。ひと目で上級プレイヤーとわかる虹色の架空金属の鎧。兜だけを脱いで、中にいたのは金髪

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Scented spring

Scented spring

 大切なものは持たない主義、とか、わたしはいつも周りに言っているけれど、それって要するに、そういうふうに言える自分、みたいなのを全力で守りにいってるわけで、なおかつ、わたしが他人の大切にしている何か(またはその人そのもの)を大切にできなかったときの言い訳でもあって、いわゆるよくある、普通とは少し違う生き方をわたしは肯定するし実践してますよアピール(心地いいんだ、これが)の裏では、めちゃめちゃ保守的

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