ここも、せんじょうだったとは……(えせエッセイNo.8)
「今、地学にはまってんねん」
すっかり大阪に染まってしまった娘が言う。あぁ、都会の風に染まってしまったのか……父は遠い目をしながら聞いていた。
いや、それより地学って何よ?
中学、高校では地学が大嫌いだったという娘は、大学で理科を専攻して多くの先生との出会いがあったようだ。担当の先生によって、その教科の好き嫌いは大きく変わるらしい。先生って責任重大。
先日は大阪の有名な地下街を練り歩き、壁や床の化石を探したと嬉しそうに話してくれた。化石が見つかりそうな石を見たらビビビとセンサーが働くまでになったそうだ。
まだまだ人間もAIには負けていない。
その講義ではレポートを提出しなければならないらしい。何を書けばよいのかわからないと先生に相談したところ、「地元のことを調べてください」と言われたとか。
地元って、何もないところなのですが……
私が娘の立場だったとしても、おそらく同じように答えたであろう。滋賀県北部は琵琶湖しかないのだ。地学的に面白い題材など、何一つない。田舎すぎて、化石が見つかりそうな大理石を使用している立派な建物も思いつかない。ましてや、地下街などない。地下は琵琶湖である。(ウソ)
先生の回答は意外なものだった。
「滋賀県は地学的に非常に面白いところです。地域のお寺はすべて海抜の高いところに建てられています。長浜城や安土城は琵琶湖に流れる河川の三角州、扇状地にあり、琵琶湖側からは敵に攻められない仕組みです。扇状地には城下町もできて賑わっていました」
その話を聞き、確かに中学校の社会で砂州や扇状地について習ったことを思い出した。しかし、学習した題材はすべて海だったため、身近なところにあるとは考えたこともなかった。
調べてみると、確かに長浜城は『姉川扇状地』にあるらしい。
生活圏内のほぼすべてが扇状地だったことに驚いた。
ある日突然、三角州
娘が帰省するタイミングに合わせ、家族で外食する予定をしていた。予約していた時間まで約1時間。微妙に時間を持て余していた。
「三角州、見に行くか?」
反対意見もなく、家族4人で出かけた。理系家族の行動は不可解だ。
おそらく、あの辺りだ。見当はついていた。あの川が姉川かどうかは自信がなかった。しかし、琵琶湖に流れている大きな川は、そこしか思い浮かばない。
どうやら、草野川と姉川が合流し、さらに高時川と姉川が合流し、一本の河川となって琵琶湖に流れ出ているらしい。こんなに近くなのに、半世紀も住み続けているのに、知らないことが多すぎる。
橋には『姉川』と書かれてあった。ビンゴ❗❗
砂浜を歩き続け、ようやくたどり着いた先にあったのは……
見事な三角だった。
違う。
これは見事な三角🔺ではあるが、三角州ではない。三角州の一部なのだ。
振り返れば、奴がいた。
本物の三角州は……
地上からは上手く撮影できないレベルの大きさだった。三角州は思ったよりも大きかった。ここにたどり着くまでの道のりが物語っている。地域一帯が扇状地なのだ。
今から一緒に、これから一緒に、河口へ行こうか~🎵
歌っている場合ではない。残念ながらタイムアウトだった。
YAH YAH YAH!
帰りに突然、戦場地
昨日、娘を連れて姉川の少し上流の方へも行った。帰省途中の寄り道。向かった先は『姉川の古戦場』だ。
残念ながら、川の水はかなり少なくなっていたが、学びの多い地形だったらしい。娘はほんの少し感動していたようだ。よく考えたら、堤防が川よりも高くなっていることすら不思議だった。
「川の水で押しやられてんねん」
大阪の風に染まった娘の言葉に納得である。今まで考えたこともなかった。人工物かと思っていたくらいだ。娘からの学びが多い。こんな風に地域に根付いた知識を学ぶのも楽しいものだ。
娘、戦場へ……
今日は午後から滋賀県の教員採用試験らしい。
娘は戦場へと向かった。
ご武運を❗
きっと娘は、生徒に興味を持ってもらえる授業ができるだろう。
さて、私も戦場へと向かおうか……