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野球が好き

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息子の母校の野球部応援からNPB、さらに、大谷翔平選手を中心とするMLB日本人選手たちの活躍を祈る想いを、エッセイにしたためます。
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その読書は、記録と記憶と感情をたどる「旅」だった

引っ越しの荷造りのため、段ボールに収めようとアルバムに手を伸ばす。 ちょっと休憩をするのに、ぴったりの代物だ。 一息つこうと表紙をめくったが最後、懐かしい写真に見入ってしまい、作業が進まなくなってしまった。 だれしも、一度や二度、そんな経験があるだろう。 そんな「あるある」を引っ越しではなく、実は「読書」で味わった。 その書籍を購入したのは、春4月のこと。 ようやっと読了にたどり着いた頃、季節はすでに秋も深まった10月終わりになっていた。 その書籍のタイトルは 「

打ち直した1本に世界一の夢を追え:大谷翔平2024

「野球界は、みんなキリのいい数字が好きだから」 誰のセリフだったか全く記憶にないのだけれど、確かに今シーズンの大谷翔平観戦は、いつもの、いやいつも以上のすご過ぎる活躍っぷりに加え、“キリのいい数字”を追いかけ回した162ゲームだった。 待って待って待ち続け、ようやく9試合・41打席目に飛び出た第「1」号ホームランにはじまり、日米通算「1000」本安打を通過。その後も、メジャー通算「100」盗塁に「200」号ホームラン、「800」安打と続き、今シーズンの「30」号を放った翌

それは神の“応援”だったのか

真っ白なシャツに黒いインクが一滴、ポトリと落ちた。 小さな小さなそのシミは、少しずつ少しずつ広がっていった。 インクの濃度を、誰にも気づかれないほどの淡さに変えながら、静かに、ゆっくりとしたスピードで――。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 白かったはずのシャツが、人知れず淡いグレーに染められ始めていたことを知らされたのは、あまりにも突然のことだった。 彼が受けた衝撃の大きさは、想像するにあまりある。 心血を注いで闘い続けた6年間の努力の結晶は、すべてど

消せない痛みが変えた過去

「過去は未来で変えられる」 映画の中の好きなセリフだ。 後悔でしかなかった私自身の過去は、確かに、未来が変えてくれたのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今シーズンも、いよいよプロ野球界に“春”がやってきた。 新たに入団した若い選手たちが、どんな活躍を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。 プロスポーツの世界において、第一線で活躍を続けるのは並大抵のことではない。毎年、たくさんの若い選手が入団する一方で、ひっそりと現役を引退し、フィールドを離れて舞台裏に活

野球の神様

冬の色は、私にとって、雪や風、空、木々や花といった 景色を指すものではない。 今日、12月10日(現地時間12月9日)は 私の中に、新たな「冬の色」が加わった一日になった。 自分のための記録として、書き記しておこうと思う。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「野球の神様って、本当にいるんだ」 栗山前WBC監督の「翔平が自分で決めたことは、 野球の神様が応援してくれる」という言葉に 胸が震えたのは、11月の半ばだったか。 それからおよそ1カ月。

白球を彼と追え! 止まった心を動かした74日間

“I'm finishing!” (俺が終わらせる!) 8回の投球を終え、戻ったダグアウトで発した言葉は、野球ファンの心を躍らせたセリフとして、瞬く間に世界を駆け抜けた。 7月27日(現地時間)、対デトロイトタイガース戦。9回裏2アウト。一瞬ひやりとしたセンターへのライナーは、外野手のグラブに美しく収まった。 “Shohei Ohtani goes all nine!” (大谷翔平が9イニングを投げぬいた!) アナウンサーのエキサイティングな声が響く中、メジャー初完投

共に見届ける30年越しの夢…いざ甲子園へ!

高く打ち上げられた白球が、2塁手のグラブにすっぽりと収まった。 次の瞬間、どれだけの人が歓喜し、叫び、両手を突き上げ、涙したことだろう。 今年も始まった、夏の甲子園大会。地方予選を勝ち抜いた49校の中に、息子の母校がいる。 夢にまで見た甲子園へと続く地方予選。7月末に開催された県大会の決勝戦は、高校野球史上に残る名勝負のひとつになった。 どちらも譲らず延長戦へ。ファインプレーにつぐファインプレーで、再三ピンチをしのぎ続け、とうとうタイブレーク。 こちらが点を入れれば

ひとつのまち

「まるで決勝戦のような大応援です。アルプススタンドが揺れています!」 全国高等学校野球選手権大会の甲子園球場。1回戦にもかかわらず、ピッチャーの一球一球に地鳴りのような大声援が送られていた。その迫力は、百戦錬磨の実況アナウンサーでさえ、声色の興奮を隠せないほどだった。 2013年夏。私たちのまちの高校が驚異の快進撃で地区予選を勝ち上がり、創部51年目にして初めて夏の甲子園大会に出場したのだ。 山と田んぼに囲まれた人口3万8千人足らずの、のどかな地方の田舎まちにある公立高