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「お寺の掲示板大賞2020」受賞作に思う

■年々注目度を増す好企画
「お寺の掲示板大賞」をご存知だろうか。
お寺の掲示板を写した写真をTwitterやInstagramに投稿し、その標語内容の有難さ・インパクト等によって入賞を決める企画で、公益財団法人 仏教伝道協会が主催している。2018年からスタートし、年々着実に注目度を増している、好企画である。
先般、昨年の「お寺の掲示板大賞2020」の受賞作品が発表されたので、今回はこれを紹介したい。

■大賞に選ばれたのはやはり……
仏教伝道協会大賞に選ばれたのは

コロナよりも
怖いのは
人間だった


という、明導寺(浄土真宗本願寺派・熊本県球磨郡)で撮影された言葉。
講評には、

「今年は新型コロナウイルスの恐ろしさが強調された1年でしたが、それと同時にマスク騒動やコロナ差別などで人間の醜さが強く表れた1年でもありました。仏教を通して、人間(自分自身)の煩悩をもう一度見つめ直してほしいという願いを込めて、この作品を大賞とさせていただきます。」

とある。やはり2020年はコロナ禍が象徴される言葉が大賞となった。

■筆者の目を引いた言葉は……
大賞以下には10の賞が設けられているが、中でも筆者の目を引いたのは

やられても
やり返さない
仏教だ


という、築地本願寺(浄土真宗本願寺派・東京都中央区)で撮影された言葉。当noteの熱心な読者ならば、昨年の8/22の当エントリ【「倍返し」のキリスト教!?】で、キリスト教ならばどうか?を述べたものを思い出すのではなかろうか。

「もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい(マタイの福音書5章39節)」を信条とする、キリスト教徒的には「やりかえす」なんてもってのほかである。主人公がもし、クリスチャンだったら「やられても、やりなおしさせる。繰り返しだ!」がきっと正しい。キリスト教徒がこうした信念を持てるのは、下記の聖書の記述にあるように、「やられたら、やりかえす=復讐」は、神の業だからという認識があるからである。

こうした、各宗教間の考え方の違いなどもあらためて見てみると面白い。各国における立場や姿勢などが、その国の国教にも拠っていることを感じ取れたりする。

■他にもユニークな標語がたくさん
筆者の住まう寺でも、毎月1日・15日と標語を替えているが、なかなかユーモアにあふれ且つ唸らせるような言葉というのは難しい。コピーライター的な感性も必要なのだなと思わせられる。(ちなみにヘッダーの写真「叱られた 恩を忘れず 墓参り」は昨年のお盆の時期のもの。)

関心を持たれた方は、ぜひ「お寺の掲示板大賞2020」のHPをご覧いただきたい。他にも含蓄に富んだ標語がたくさん紹介されている。

「お寺の掲示板大賞2020」
https://www.bdk.or.jp/kagayake2020/publication.html
過去の受賞作品はコチラ
https://www.bdk.or.jp/kagayake2020/


Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)


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