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「おとなしやか」という言葉に出会ったので

なんだか私にはおしゃれ過ぎるような

本の雰囲気がそう言っている‥ような


数年前、そう思いつつも手に取って連れて帰ったのはどうしてなのだろう
連れて帰ってくるだなんて「本」を擬人化したりするのはどうしてなのだろう


その方の書籍が本屋さんで

並んでいるのをみかけて

以前読んだ

「伝わるちから」
        松浦弥太郎
              小学館

松浦弥太郎 1965年東京生まれ エッセイスト

の中で出会った

「おとなしやか」と言う言葉をふと思い出す

「おとなしやか」とは

落ち着いていて、おだやかなという意味で
「おとなしい」という言葉に似ているのだけど
加えて「思慮」や「分別」があるというような
より上品でポジティブな印象を私は持ち
言葉の響きが好きだなぁと感じました

著者の松浦さんが日本料理を一緒に召し上がっていた
年上の女性が言われた言葉

「おとなしやかなおいしさですね」

その言葉にすてきだな、きれいだなと小さな感動を抱かれて

このお話しが書かれたのは秋を迎えた頃だったから

秋といえば、装いが楽しい季節でもある

そう言われて

先日、僕はラルフローレンの甥っ子、グレッグ・ローレンのジャケットを買った
とてもおとなしやかである

と、「おとなしやか」を使われるのであります
なんともゴージャスな使いっぷりです
やはり本がおしゃれ過ぎていると感じた事は間違いではなく
あまりのゴージャスっぷりにほおをぶたれて
もう自分には「おとなしやか」という言葉に心惹かれながら
「おとなしやか」と言う言葉を使える日は来ないな、くるもんかと
石ころなどを蹴飛ばしたくなるような
卑屈な気持ちになりそうだったのですが

でも、

大好きな秋、それを着て、どこへ出かけようか
新しい服を着ると、旅に出かけたくなるのは僕だけだろうか。

それは人に恋をした時の気分に似ている

そんな気分なら、たとえそれほどに上質なお洋服を持たない
私でもわかりますと思い

ご機嫌になりました

不思議な偶然で

昨晩

泉鏡花「高野聖こうやひじり」を四度目の再読チャレンジをしていて

「おとなしやか」に出会います

泉鏡花の文体は私には難解です
一度目はただただ字面を追って意味がわからず
二度目は解説を読んで、大まかなあらすじを知りながらだったので
なるほどなるほどと、読み進めるのですが、油断すると1ページくらい
平気で字面だけみて内容を理解出来ないで、戻るを繰り返して
三度目は二度目よりは物語の中に入り込んでゆけた‥かな

そして四度目をなんとなく再再再チャレンジした夕べ
「おとなしやか」が使われている事に気づきます

泉鏡花は、以前好きな作家さんの本を並行読みしていた時に
立て続けに「泉鏡花を読む」という場面に出会い
そうか、作家さん達は何かバイブルのように
時に「泉鏡花」を読み返すという暗黙のルールがおありなのですね
この文体をきっとわけもなく読みくだし
文字を操る時の良い筋肉をキープするのに役立ておられるに違いない
と、勝手な思い込みであります

背伸びして読んでみている「泉鏡花」は難しく
読書で、あんまり同じ作品を読み返す事は無いのですが
なんだか魅力的で無限に読み返してしまいそうです

文体自体の難解さに気をとられて
ここにも「おとなしやか」があった事に四度目で気がついたのです

不思議な偶然
そんな小さな偶然を拾い集めて
いったい何処へゆこうとしているのでしょうか


とりあえず白米をゆっくりかみつつ「おとなしやかな味ですね」と、言える
味を求めてあろうはずもない我が家の食卓テーブルの上をえーえんに箸が
さまよい続けます

おとなしやかな味どこですか

とてもおしゃれな松浦弥太郎さん
「おとなしやか」を
「おとなしなやか」と間違えて覚えたりされていたそうです

装丁の絵が多分好きです。結局2冊持っておりました。おとなしやかな装丁ですね。

急激に親しみを覚えました

泉鏡花の「おとなしやか」は

おとなしやかな風采とりなりで、羅紗らしゃの角袖の外套を着て、白のふらんねるの襟巻きをしめ、トルコ形の帽を被り、毛糸の手袋をめ、白足袋に、日和下駄ひよりげたで、一見、僧侶よりは世の中の宗匠というものに、それよりもむしろ俗か。

       「歌行燈・高野聖」泉鏡花  新潮文庫     

と、高野山に席を置く旅僧の風采とりなりが「おとなしやか」だと
使われております


最後まで読んでくださりありがとうございました😊
こうして好きな事が出来ている今に感謝します。

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