トラウマ治療:ソマティック・エクスペリエンシング(SE)体験④「震え」は、スゴイ!

複雑性トラウマの治療として受けているセラピー「ソマティック・エクスペリエンシング(SE)」のセッションの5回目くらいで、子供の頃のつらかったことをセラピストに話している時、はじめて足がガクガクと震え出しました。震えは、身体に残っているトラウマのエネルギーの解放として起こることがあると本で読んでいましたが、本当に起こるんだ!と思いました。

その時は震えが20分近く続きました。セッションが終わる時は、セラピストに言われて、足指をほんの少しずつゆっくり動かして、震えをゆっくりと止めて、そして家でよく休むように言われて、帰宅しました。

解放のサイン その1 震え
「震え」は、トラウマ解放の最も一般的なサインです。怖いと身体が勝手に震え出すのは、体内に生じた膨大なエネルギーを解放し、交感神経の過剰な活性化を静めて、自律神経の自己調整を取り戻すためです。つまり、身体が震えるのは良いことなのです。

なのに人間はたいていの場合、自分の身体が震え始めると、それを止めようと必死になります。人目を気にしたり、震えそのものを怖がってしまったりすることが、その理由ですが、それは自律神経の観点から見ると、非常にもったいないことです。汚いたとえですが、トイレに行きたいのを無理に我慢するようなものだからです。

人間、出すものを出さないと病気になりますよね? 震えを意図的に止めてしまうのも、それと同じです。悪夢やフラッシュバック、パニックなどは、解放されずに身体内に残っている震え(トラウマのエネルギー)が形を変えたものなのです。

藤原ちえこ『本気でトラウマを解消したいあなたへ』(p.53-54)

藤原ちえこ著『本気でトラウマを解消したいあなたへ』の54、55ページの脚注に、下記の震えの例の動画のリンク先が掲載されています。これと同じような震えが自分にも起こりました。

震えの例 その1
https://www.youtube.com/watch?v=VoJZGi7VrJU

震えの例 その2
https://www.youtube.com/watch?v=7qSNgEx4jmE

自分が一人でいる時に、それほど激しく身体が震えはじめたら、ほとんどの人は震え自体におびえて、それを止めようとしてしまうかもしれません。そうした震えは怖がらなくていいばかりか、身体が抱えている余計なものを解放する(自分が苦しんでいる症状を手放す)絶好のチャンスであることをぜひ覚えておいてください。身体が震え始めたら、のんびり座り、ただその震えが起こるに任せておくのが一番です。

念のために言うと、震えは大きければ大きいほどいいわけではありません。外からは見えない、自分の内側だけで感じられるような微細な震えも非常に有効です。(略)

そして、震えが自然に収まった後には、すっきりしたり、何かがほどけた感覚がしたり、温かくなったりという心地良い感覚が出てきます。あるいは、どっと疲れを感じて、そのまま眠ってしまいたくなるかもしれませんが、それもオッケーです。それらはどちらも、副交感神経が優位になって、身体が休息モードに入ったサインです。

藤原ちえこ『本気でトラウマを解消したいあなたへ』(p.54-55)

同著では、「震え」以外にトラウマのエネルギーが解放される代表的なサインとして、しびれ、じんじんする感覚、熱、涙、あくび、くしゃみ、咳など、悪夢、フラッシュバックが挙げられています。

出典:藤原ちえこ『本気でトラウマを解消したいあなたへ』(p.55-60)

最初のセラピストのSE(ソマティックエクスペリエンス)セラピーは、合計15回行きましたが、その後は一度もこのような震えが起こることはありませんでした。最後の数回は、そのセラピストのことを怖く感じるようになっていて(口調が厳しいし、責め立てられるような感じだったので)ずっと緊張している感じになってしまって、安心感もなく、おそらく体から出てくるものも出てこられない感じだったと思います。

その後、別のセラピストに変えて、SEのセラピーを継続しました。そのセラピストとのセッションでは、3-4回目くらいの時に、つらい話をしている最中、声が出なくなる、ということがありました。それまでの人生で、声が出なくなるという経験をしたことがなかったので驚きましたが、声が出なくなるなんて、子供の頃の自分は本当につらかったんだな、と感じました。つらい話になると声が出なくなって、別の話題になると声は戻り、またつらい話をするとすぐに声が出なくなる、ということが、何回かのセッションで起こりました。

最初のセラピストで震えを経験してから、数ヵ月後、日常生活で2回、震えを経験しました。1回目は、足がガタガタ震えてきて、止まらなくて、「自分はここから逃げ出したいのだろうな」と感じました。でも、席を立つこともできずに最後までいた、ということがありました。

2回目は、それから1か月後位でしたが、同じように震えが止まらなくなる、という出来事がありました。その時は、「これはきっとトラウマのエネルギーが解放されている、良いことが起こっているんだろうな」と感じました。

1回目と2回目で、起こっている震えは同じようなものだったのに、自分の感じ方が違いました。1回目は、すごく嫌な感じで逃げ出したい感じ、2回目は、良い感じではないけれど、多分、トラウマのエネルギーが外に出ていっているのだから、良いことなのだろうな、と思う感じ、という違いがありました。

この違いについて、2人のセラピストに質問すると、2人の回答は同じで、「自分が感じる感覚が正しい」ということでした。私が嫌な感じの震えだと感じたら、それは良くないもので、私が良い感じの震えだと感じたのであれは、それは良い震えなのだ、という説明でした。つまり、自分で感じる感覚が正しくて、それを信じて良い、ということなのです。

そしてセラピストから、「身体が嫌がっていることは、やらないでほしいんですよね」と言われました。

その後、日常生活で、ちょっとした事件?がありました。ある日、外出していた時、小学生位の男の子が外で立たされていて、お父さんと思われる男性から説教を受けていました。その男の子は、お父さんの前でずっと身じろぎもせずに立っていて(凍りつきでしょう)、お父さんはずっと何かを怒り続けていました。まるで子供の頃の自分のようで、その様子をずっと見ていました。

その翌日から、日常生活で、震えが止まらなくなりました。私は家にひとりでいることが多いので、誰の目も気にせず、震えが出てくるのにまかせていました。この震えは、身体は疲れるけど、嫌な感じではなくて、「きっとこれはトラウマ解放のエネルギーなのだろうな」と感じられるものでした。2週間くらい、かなり大きな震えが連日のように続いて、一日のうちで目が覚めている時間の半分くらい、ずっと続いていた日もありました。その後、少しずつ震えの頻度は減り、震え方も小さくなってきました。

先の引用にもありましたが、震えの大きさは関係ないそうです。セラピーで、私が「体の奥で震えのような感じがある、小さいけどね」と言うと、セラピストから「過小評価しないでください」と言われたことがありました。どんなに小さな感覚であっても大切な感覚なのです。

そして、これがとても大事なのですが、日常で、震えが頻繁に出てくるようになってから、精神的にすごく楽になり、色々なことを落ち着いて考えられたり、以前よりも落ち着いて生活できるようになってきたのです。
去年、とてもつらいことがあってから、精神的に不安定だったり、落ち込むことが多かったのですが、それが徐々に減ってきて、震えが起これば起こるほど、気持ちが楽になっていくように感じました。

きっと本当に体に残っていたトラウマのエネルギーが、震えによって、少しずつ解放されていったのだろうな、と思います。だから「震えってスゴイ!」と思いました。

トラウマを抱えて悩んでいる方々に伝えたいのは、もしも日常で震えが起きたら、それを止めない方が良いということ、震えでトラウマのエネルギーが解放されていっているかもしれないから。

私の場合は、セラピーを受けていた時に震えを経験しましたが、トラウマを解放するために震えを意図的に起こすエクササイズがあります。TRE(トラウマ・緊張解放エクササイズ)というものです。これについては、本が出ていて、またウェブでやり方が公開されているので、自分一人でもできる方法です。次回は、TREについて書きたいと思います。